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 今日一日、なんとも言えない気分で過ごしてしまった。彰人は適当な奴だから、関係が変わったりとかはなかったし奴もいつもどおりへらへらとしていたからそこらへんはどうでもいいけれど、智駿さん以外の人にああいうことをされてイッてしまった自分に軽くショックを受けていた。あそこで抵抗できないって、俺思ったより非力だったのかなとか、拒絶の意思が足りなかったのかな、とか。間違っても「もっとして」なんては思わなかったから、気持ち的にはビッチじゃないんだけど身体がどうしても……。 「梓乃くーん!」  悶々としながら皿洗いをしていると、店長が俺を呼びに来た。今はバイト中だ、あんまりぼやぼやとしていると変なミスとかをするかもしれない、と店長の声にハッとすれば、顔をのぞかせた店長が申し訳なさそうに手を合わせてきた。 「ごめん、急に団体さんきたから、こっち手伝って」 「へっ、団体さん」  ちらりと時計をみてみれば、終電の時間が近づいている。この時間から団体客がきたとなると、終電を逃すかもしれない。ただ、お世話になっている店長だしここで嫌な顔をするわけにもいかず、俺は笑顔を浮かべながら店長の後をついていった。

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