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「あ……」  ピピ、と電子音が鳴る。のろのろと腕を伸ばして音のもとを辿っていけば、いつも智駿さんがセットしてくれる目覚まし時計に触れた。よいしょ、と手に力を込めて目覚ましを止めて……俺はひとつの違和感に気付く。 「あ、れ……」  見渡せば、俺は智駿さんの家にいた。たしか俺はラブホで抱かれたはずなんだけど……もしかして夢だった? あの、熱いエッチが、まさかの夢……?そんなばかな、って身体を起こして……俺はふっと笑ってしまった。 「ゆめ、じゃなかった……」  布団が剥がれ落ちて、みえる。全身につけられたキスマーク。  たぶん智駿さんは朝早くに仕事の準備をしなくちゃいけないから、今朝も早くに起きてホテルをチェックアウトしたんだと思う。今の時刻を見ると、もうお昼前。きっと俺の体は智駿さんの早起きには対応できなかったのだ。そういえば夢の中で智駿さんに起こされたような気がしないでもない。きっと智駿さんは俺を起こそうとしたけれど、俺は強情にも起きなかったんだと思う。俺を置いてチェックアウト、っていうのもあれだから、俺も一緒に抱えられてチェックアウトして、俺は智駿さんの家に連れてこられた、のだろう。  のそのそとベッドを這い出て、テーブルに置いてあったメモ書きを見てみる。『おはよう。今朝も顔を合わせられなくてごめんね。いってきます』といつものように必要最低限のことが書いてあるそれに、俺は思わず笑ってしまった。「いってらっしゃい」と呟いて、立ち上がる。  壁に立てかけてある姿見の前に立ってみる。やっぱり下半身がやられていてがくがくしたけれど、なんとか立って歩くことはできた。  思わず、ため息がでた。すごかった。全身にびっしりと、特に俺の感じやすいあたりに大量につけられたキスマーク。これは、ほんとうに抱かれる側の身体だ。心なしか前よりも乳首がぷっくりしてきている気がするし。 「あ……すごい……」  後ろを向いて、軽く脚を開く。そして、腰を鏡に向かって突き出して、お尻の肉をぐっと掴んで穴をさらけ出す。太ももの内側と、穴の周囲にもキスマーク。こうしてまじまじと自分のお尻の穴をみつめるのは初めてだけど……すっごい、やらしい。ピンク色で、穴の入り口はつやつやしていて、こうしてガン見すればぱくぱくと息をするように動く。思わず何かを挿れてなかを掻き回したくなるようなお尻の穴だ。  俺の身体、こんなんじゃなかった。智駿さんにエッチなことをいっぱいされて、身体が女の子になってきちゃったんだと思う。ほんとうに、いやらしい身体だ。 「……はぅっ、」  はくはくと動いているお尻の穴をみていて、思わず指を挿れてしまった。そうすれば、なかがきゅうと締まって、昨日なかに注がれた精液が奥のほうから出てくる。 「んっ……んっ……」  指を抜き差しすると、脚がガクガクしてきて、その場に崩れ落ちてしまった。鏡に向かって腰を突き出して、上半身をへたりと床に伏せる。つぷ、つぷ、つぷ、つぷ、って柔らかいお尻の穴を何度も抜き差しすると、ヒクヒクッと穴が痙攣して智駿さんの精液をとろりと吐き出してしまった。 「ちはやさん……」  イキながら、智駿さんの名前を囁いた。  自分が智駿さん仕様の身体になっていくことが、嬉しい。智駿さんに触られてイキまくっちゃう、キスマークだらけのこの身体。あんなにオシオキされちゃって、……別にオシオキなんてされなくたって、俺は智駿さんだけのもの。でも、こうして身体に独占欲を刻みつけられたことを、ものすごく幸せに思った。 「すき……智駿さん……」  もう一度、鏡をみて。精液が零れてぬらぬらと光るお尻の穴と、赤い痕がびっしりと肌――それらに満足感を覚えた。 Nougats de Montelimar~メレンゲにナッツを混ぜて~ fin

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