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「梓乃ちゃんってさー」 「ん?」 「雰囲気と違ってすっごいエッチなことしてるよね」 「はっ!?」  結局、梓乃は俺の家に泊まってくれることになった。俺の風邪は完全に治ったわけではないから、ずっと一緒の部屋にいれば感染ってしまうんじゃないかと思ったけれど、梓乃が一緒にいるって言ってくれた。特に何事もなく寝る時間になって、布団に入ってふと思ったことを口にすれば、梓乃はぎょっとしたように声をひっくり返らせる。 「いや~、俺、梓乃はもっと淡白なやつだって思ってたからさ。梓乃が今の人と付き合い始めたのって、ここ二、三ヶ月のことだよね?」 「えっ……う、うん」 「だよね! この二、三ヶ月で急に梓乃、スケベなオーラ出し始めたからさ! 彼氏さんに開発されたんだなーって」 「か、開発、とか……」  梓乃が、顔を真赤にしてわなわなと震えている。本当に、ここ最近の梓乃ははじめの頃の印象とはまるっきり違う。草食系男子代表選手だったのに、今や全身からエッチオーラを出している。もともと実はエロかったのか、それとも今の彼氏がそうしたのか。どっちにしても、こういた梓乃の恥ずかしがっている姿とかいやらしい顔なんかは俺の知らないものだから、もっと見てみたい。失恋はしたけれど、俺の梓乃への興味は尽きていない。 「梓乃ちゃんが挿れられる方だよね?」 「……うん」 「どんな感じ? やっぱり挿れるより挿れられる方が気持ちいい?」 「ど、どんな感じって……そ、その……す、すごいよ、うん」 「すごいって? チンコでイクのとどう違うの?」 「だ、だから……! えっと、……こう、……なんか、その、……頭真っ白になるっていうか」  根掘り葉掘り、聞いてみる。これは完全なるセクハラだけど手は出さないから許してくれ、と心の中で謝っておく。  わりと下ネタなんかは男同士だと話したりもする。そのときは笑いながらみんな話すし、そこまで恥ずかしがっている奴はあんまりいないけれど、今の梓乃の恥ずかしがりようはすごい。やはり、挿れられる側だからだろうか。正常位にしてもバックにしても、股を開いたりケツを突き出したりと恥ずかしい体勢をとることになるわけだから、それを話すのはたしかに恥ずかしいと思う。 「梓乃ちゃんってはじめっから敏感だったの? けっこうすごいよね?」 「い、いや……」 「やっぱり開発されたんだ!? どうやって?」 「その……たくさん、触られたっていうか……」  梓乃が、俺に背を向ける。梓乃の身体にかかっている布団がもぞもぞと動いている。もしかしたら、彼氏に抱かれているところを思い出して疼いてしまっているのだろう――というのは邪推かもしれないけれど、俺の想像の斜め上にエロい梓乃のことだからあながち間違いじゃないかもしれない。 「梓乃ちゃん、ほんとエッチくなったよねー」 「う、うるさい……」  暗闇の中、俺から見えるのは梓乃のうなじだけだ。そのうなじもやたらと色っぽくて、眩暈がするほど。  俺がこんなこと思うのもなんだけれど、こいつの色香にあてられてしまう人はこの先もでてきてしまうんじゃないか、なんて思ってしまう。俺だって、男に……というよりも人に興味をもっていなかったのに、こんな風になってしまっているのだから。  梓乃は拒絶が下手くそ、というか警戒心がなさすぎる。たしかに、男同士でそんな目でみられることなんてそうそうあるものではない。異性同士なら距離が近ければ警戒するところを、男同士だからといって梓乃は警戒を解いてしまう。でも、今のお前は本当にヤバイから……っていうのを梓乃はわかっていない。梓乃から漂ってくる色気は下半身にズドンとくるものがあって、たぶんそれは男を惹きつけてしまう。 「ま、そういうエッチな姿は彼氏さんの前だけでみせてくださいねー」 「あたりまえだろ!」 「うんうん、おやすみー」  とりあえず、あんなに身体に痕を付けるくらいに独占欲の強い彼氏がいるなら大丈夫だろうけれど。俺の目の届く範囲くらいは守ってあげようかな、なんて思った。 Biscuit de Savoie~たっぷりのジャムとご一緒に~ fin

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