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「ねぇ、智駿くんと仲良いんでしょ? 何か知らないの?」
「あいつと仲良くなんてないし何も知らないからァ!」
あの「たからばこ」に行った日から一週間くらい経ったころだろうか。放課後、元カノの奈々が俺に助けを請うようにして相談してきた。なんでも、智駿が自分のことを好きなのかどうか、わからない。ただ単に自分が告白したから付き合っているだけなんじゃないかと。
「智駿くん、誰から告白されてもOKするから、みんな今カノとの関係をすっごい探ってるんだよ! 別れた瞬間に、告白早い者勝ち」
「なに、智駿、女子からそんな扱いなの? やべぇなあいつ」
「だから私もまた別れることになるかもしれない……ねえ、智駿くん何か私のこと言ってない?」
「だから知らないって」
そんなにホイホイ付き合って別れてばっかりの男なんて、すぐに評判悪くなりそうなものだが。「私ならそんな風にはならない」って自分の魅力を過信したプライドの高い子たちが挑戦して、また智駿の女経験値だけをあげていくのかもしれない。
「なに、素っ気ないとか?」
「ううん、優しいよ」
「じゃあ、なんでそんなこと思うわけ?」
「なんか……智駿くん、全然私に夢中になってる感じがしない。優しいだけっていうか……」
「……あー」
智駿が長続きしないのは、あの浮世離れした感じが原因だろう。奈々の言葉で確信する。
浮世離れした雰囲気は、見ている分にはミステリアスでかっこいいかもしれない。でも、付き合うとなると別。あの、何にもとらわれないところ。恋人にすらもとらわれることなく、ふわふわとしてどこを見ているのかわからない。
「あいついつもそんな感じだって。彼女にもがっついたりしないから」
「えー? それ、ほんとに好きなの?」
「さあー? あいつまともに感情あんのかね。心臓が機械でできてんじゃないの」
「うーん……」
あいつは熱というものを持っているのだろうか。何かに夢中になったりしない。もちろん感情がないとか、そんな漫画のキャラクターみたいなことはないが、他の奴らとは少し違う。そういう風に色々と考えたけれど……「たからばこ」でみたアイツの嬉しそうな顔は、「生きている」という感じがしていた。
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