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gâteau basque~甘いのブラックチェリーのジャムを~

「で、でたぁ……!」  学校が終わっていつものように駅に向かったとき。ちょうど通りかかった人物に思わず声をあげてしまう。 「やだなァ梓乃くん。私を変質者みたいな目で見て」 「変質者ですよ! あっ、今日殺虫剤持ってない!」 「智駿の奴マジで梓乃くんに殺虫剤持たせようとしてるのか」 現れたのは、白柳さん。ラフな格好をしているから今日は非番なのかもしれない。 「いやいや智駿に溺愛されまくっている梓乃くん。すごいねえ、この前智駿、すっごい君への愛を語っていたからねェ」 ――白柳さんの考えていることはよくわからない。いつもへらへらとしていて、智駿さんを友人として大切にしているのか俺にセクハラをしたいのか、何をしたいのかがよくわからない。智駿さんの言うことをきいて殺虫剤を常備しておけばよかった……なんて考えていれば、白柳さんがニヤニヤとしながら少し離れたところを指差した。 「せっかくここで会ったんだしさ、楽しいことしようか」 「……あそこで? 楽しいこと?」 「私しか知っていない智駿のひみつを教えてやろう」 「……智駿さんのひみつ?」  白柳さんが指差したのは、レンタルショップだ。CDやらDVDやらをレンタルしているところ。そこで智駿さんの何を知ることができるんだろうと俺は首をかしげるしかなかったけれど、いつの間にか白柳さんに手首を掴まれて、そこに向かってずるずると引きずられ始めていた。

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