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「う、うわ……」  怪しい店が立ち並ぶ通りを歩いて行って俺が連れてこられたのは、アダルトショップだった。以前友達と店の前を通りかかって「やばい店」と笑いあったことがある。  店の中はいかにもな外装と特にギャップはなく、激安雑貨なんかが売っている某チェーン店のような雰囲気だった。AV女優のポスターやアダルトグッズのポスターが壁に貼ってあって、所狭しと商品が並んでいる。 「な、なんかすごいですね……」  入る前こそは、アダルトショップという卑猥さに怖気付いていたものの、入ってしまえば案外心は落ち着いてしまった。アダルトグッズ自体に恥じらいを覚えるような性分でもないし(自分が使うなら別だけど)面白くなってまじまじと商品を眺めてしまう。 「梓乃くんが使ってるのって、どれ?」 「つ、使ってないです!」  近くにあったバイブのコーナーをみていると、にゅっと白柳さんが覗き込んできた。問われて慌てて否定したけれど、俺の右側にあるものがオナニーで使ったことがある奴だ。白柳さんはそんな俺の嘘を見破っているのかいないのか、意地悪そうに笑っている。 「そうそう、これ。これさ、すごいんだって。前彼女に使ったらイキまくってて大変なことになってさ」 「な、……えっ……」 「イッても抜けないんだよ。どんどんなかに入り込んでくるんだって」  白柳さんが指差したのは、極太で長い、えげつない形をしたバイブ。チンコの形状をしたなかにいれるバイブのほかに、「クリ用バイブ」とパッケージで説明されている小さなローターがくっついている。イボイボとした丸いローターがぶるぶると振動するらしい。 「はい、梓乃くん」 「……えっ?」 「これ買おうか」 「なっ、なんで!?」 「梓乃くんの健全なオナニーライフのために」 「い、いやいやいやいや」  何言ってるんだこの人は。俺は逃げようと後ずさるも、しっかりと手を掴まれてそれは叶わない。白柳さんはいやいやと首を振っている俺に顔を近づけてきて、真面目な顔つきで話し出す。 「気持ちいいマスターベーションは積極的にするべきだよ、梓乃くん。快楽を得ることで精神の衛星も保たれる。アブノーマルだなんて言われて背徳感を覚えるかもしれないが、アナルを使ったマスターベーションが気持ちいいならやればいいじゃないか、なあ梓乃くん」 「ちょっ、こわい、こわい白柳さん!」 「それに考えてもみるんだ、君の体は智駿に抱かれる体だぞ。自分で自分をどんどん開発して智駿に可愛い姿をみせてやれ。自分の技で相手をよがらせるのが男の何よりの喜びなんだからな。マスターベーションはパートナーのためだとも思って」 「~~っ」  早口でまくし立てられて、俺は思考力が低下し始めていた。白柳さんの言っていることは正しい……?なんて思い始めて頭がぼーっとしてくる。白柳さんの医者という肩書きもずるい。  気付けば俺はもう一つアダルトグッズを手に持たされて、レジに向かって背を押されてしまった。男性店員が淡々と商品を透けない無地の袋に入れてくれていたあたりで、「俺なにやってるんだ!?」と我に返ったけれど、遅かった。

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