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 前立腺をごりっ、ごりっ、とこすり上げるようにして智駿さんは奥を突き上げてくる。すっかり俺の下半身は力が抜けてしまっていて、智駿さんにされるがまま。潮がシーツを濡らして俺の下はびちょびちょになっていて、それでも智駿さんは容赦しない。  俺はもう、限界だった。突かれるたびに、声がどんどん漏れてきていた。これじゃあ智駿さんが喜ばないって思って悔しくて、ぼろぼろと涙がでてくるけれど、声は出てきてしまう。  でも、そんな俺を、智駿さんが優しく撫でてきた。声が出てしまうことなんてわかっていた、って言うように。それがまた申し訳なくて、悲しくなってくる。 「ねえ、梓乃くん」 「うぁ……」 「なんで我慢しているの」  智駿さんが俺に覆いかぶさってきて、耳元で囁く。僅か乱れた吐息が、怖いくらいに色っぽい。それだけで俺はまたイきそうになったけれど、智駿さんが俺の腰を引き寄せるように掴んできて腰をぐーっと押し付けてきたのが良すぎて、それで俺はイッた。シーツに顔を押し付けて、涙も声も必死に堪えながら、イッた。 「僕は、」 「ひっ……あー……」  耳の中に、熱い吐息が入り込む。それ以上近くで囁かれたら壊れちゃいそうになって顔をそむけようとしたけれど、それは叶わない。智駿さんが片手で俺の顎を掴んできて、逃がさまいとしっかりと固定してきたのだ。 「聞きたいよ、梓乃くんの声」 「ふ、……え?」 「とろっとろに蕩けた梓乃くんのいやらしい声、聞かせて欲しいな。梓乃くん」  思わず、何度もまばたきをしてしまう。智駿さんは優しく微笑んで、「ね?」と首を軽くかしげた。 「……ちはやさん……俺の声……いやじゃない?」 「嫌なわけないでしょ?」 「……耐えているほうが、好きなんじゃないの……?」 「んー、耐えているのもすごく可愛かったけど……僕、梓乃くんが可愛い声出しているところ大好きなんだよね」  ふふ、と智駿さんが笑って、優しく腰を動かした。「声が好き」って言われて嬉しくてしょうがなかった俺は、それだけで「あっ……」と甘い声を出してしまう。それを聞いた智駿さんはさらにゆるゆると俺のなかを突いてきた。 「あっ……あっ……あっ……」 「そう、可愛いよ、梓乃くん。もっと出して」 「あぁっ……」  もう、我慢しなくていい。声を出して、智駿さんが喜んでくれる。その嬉しさも相まって、俺はいっぱい声をだしてしまった。智駿さんはしきりに俺の首に愛おしげにキスを落としてくる。さっきの激しい責めとはまた違う、甘いとろとろな責めにもまた俺は、たくさんイッていた。ひくんっ、ひくんっ、って何度も腰を跳ねさせて、感じまくっていた。  しばらく、バックで挿入されたままゆるゆると抜き差しされたり背面にキスをされたりしていたけれど、やがてくるりと体を反転させられて、正常位の状態にされる。智駿さんは仰向けになった俺にぐっと顔を近づけてきて、息のかかる距離で囁いた。 「梓乃くん、じゃあ、口でおねだりしてみて」 「口で……?」 「さっき、やって欲しいことを言葉でおねだりしてくれなかったでしょ。ねえ、やって欲しいこと……言ってみて」  じ、と目を覗き込まれる。その視線に、「可愛い」「愛おしい」「大好き」って智駿さんの愛の囁きが聞こえてきて、ものすごくドキドキした。やって欲しいこと、ってなんだろう。たくさんあるし、そのどれもが口にするのは恥ずかしいし……けれど、俺が声に出すことを、智駿さんは喜んでくれる。いやらしい声をあげることも可愛いって言ってくれるから……いやらしいおねだりも、きっといいって思ってくれるはず。 「……ちくび……いじめてください」 「……こう?」 「あんっ……あっ、あと……奥のほう……ぐりぐりって、強くしてください……」 「ふふ、こうかな」 「んぁあっ……あぅっ……きもち、い……それから……んっ……」 「それから?」 「……それからっ……きす……キスを、してください……智駿さん……キスして」  だから、やって欲しいこと、素直に言った。すごくいやらしくてエッチなことだけど……智駿さんは目を細めて、優しく微笑んだ。  ちゅ、って唇を重ねられる。何度も、何度も。乳首をこりこりされて、奥の方をぐりぐりっと突かれて……それをされながら、甘いキスをした。幸せで幸せで、おかしくなってしまいそう。 「あっ……ん、ぁ……」 「可愛い、梓乃くん、可愛い……」 「あぁっ、ああ……ちはやさん……んぁ……」  見つめあって、交わした視線が溶けてしまいそうで。そして吐息交じりの声が、こぼれてゆく。胸が満たされて、きゅーんってして。エッチって心がいっぱいいっぱいになるんだって改めて実感した。だからエッチ大好き。気持ちいいのももちろんだけれど、幸せになるから、智駿さんとのエッチが大好き。 「あっ……あっ……」 「梓乃くん、」 「んっ、……ちはや、さ……なかだし、して……」 「ん、梓乃くん……」 「いっぱい、そそいで……ちはやさん、なかにだしてっ……」  智駿さんの吐息が荒くなってきて、そろそろだ、と感じた。俺はもうイきまくっていて、十分に快楽は得ていたのに、エッチが終わりに近づいてきて残念に思ってしまう。 「あっ、あっ、あっ、あっ……」 「梓乃くんッ……」 「んぁっ……ちはやさんっ……ちはやさん、ちはやさん……」  ぐっ、と腰を押し当てられて俺は仰け反った。そして、智駿さんの背に爪を立てるようにしてしがみつく。  どくん、となかに出される感覚に、俺の全身が歓喜に震える。なかが智駿さんで満たされていく……幸せすぎて、どうしようもない。 「智駿さん……すき……」 「僕も、梓乃くん。大好き」  イッた余韻でひくひくと震えながら、またしばらくキスをしていた。溶けてしまいそうだ、そう感じていた。

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