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「ごめんね、梓乃くん……あの子がああいうお店の子ってわからなくて……」 「……わかってます」  実際のところそんなに怒っていない。智駿さんにちょっと隙があったのは否めないけれど、智駿さんの言う通りあれは勘違いのようなものだった。店の正体がわかってからは智駿が自分で出てきてくれていたし、腹を立てたりはしていない。  じゃあ、俺がなんで怒っている風を装っているのかというと……ときどきは俺の方からお仕置きみたいなものをしてみたいからだ。  俺の方が抱かれる方だしガンガン責めるのは難しそうだけど……完全に俺が主導権を握ったエッチがしたい。そういうエッチはやろうとして何度か失敗しているけれど、俺だって男だし、今度こそは、なんて考えている。 「……智駿さん……これからホテルいきましょ」 「へっ」 「だめ?」 「……い、いいよ」  むーっとしながらホテルに誘ってきた俺に、智駿さんはびっくりしたようだった。俺の考えていることが全然わかっていないようで、面白い。俺は智駿さんの腕を掴むと、そのままホテル街に向かって進んでいった。

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