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次の日。しばらく、ベッドのうえでごろごろとして、部屋を出たのは10時近く。朝に二人でいちゃいちゃとしてしまうのはいつものことで、チェックアウトギリギリの時間までねばってしまった。大きなベッドの上でいちゃいちゃとできて満足だけど、ちょっぴり慌ただしい朝になってしまう。
「智駿」
ロビーで、チェックアウトの手続きをしているところで声をかけられる。振り返ればそこにいたのは、新見さん。これから仕事に入るのだろうか、私服を着ている。
「……新見」
「よう、帰るんだね」
彼をみてにこやかに笑う智駿さんは……やっぱり、昨日の一件で成長したのかもしれない。俺がいうのもなんだけど、一皮むけて大人っぽくなったなあなんて思う。そう考えていれば、一人できゅんきゅんとしてしまう。
「今度は俺が智駿の店に行こうかな。ちゃんと智駿がいるときに」
「どうぞ。今の僕のお店をみていって」
俺は後ろに下がって、二人の会話を聞いていた。俺は今はお邪魔かな、なんて思っていれば、新見さんがついと寄ってきて、ぽんっ、と頭に手を乗せる。
「梓乃くん、だよね。これからも智駿のこと、支えてあげてね」
「はっ……はいっ……」
「俺のライバルだから。変なところで折れたりしないように。お願いね」
……なんだか、智駿さんの周りの人に、着々と俺のことが浸透していっているような気がする。智駿さんにとって大事な人、みたいな。まるで奥さんになったような……そんな気分になって、俺はかあっと顔が熱くなった。
「うん、じゃあ。僕も梓乃くんと頑張るから。新見もがんばって」
「おお、」
二人が握手を交わす。なんだかみていて気持ちよかった。それと同時に、俺は智駿さんをずっと支えていこうって、そんなことを思った。
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