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「こういうのは、女の子に頼むんじゃないの?」
「別に女の子っていう指定はないし、男でもいいかなって」
「いやいや、男の体描いていて楽しい?」
「男を描きたいんじゃなくて梓乃くんを描きたいんだ」
由弦は、中学の頃からずっと美術部に所属している。賞もそれなりにとっているらしく、中高と美術部の部長をやっていた実力者。
そんな由弦が俺に頼んできたのが、ヌードモデルになってほしいということ。ヌードといっても下半身は隠すらしいけれど……正直抵抗があった。モデルになるほどの体ではないし、いくら同性でもじっと体を見つめられるのは恥ずかしい。
断ろう、と思った。でも、由弦は他に頼むあてがないらしく、困っている様子。
「絵のモデルって、かなり大変なんじゃないの?」
「うん。そうなんだけど……お願い、梓乃くん!」
「うーん……どうしようかな……」
「お願いします!」
本当のところは、気乗りしない。でも、ここまで頼まれると断りづらい。友達だし、これはしょうがないかな、と思い始める。
「よし、いいよ。ちょっと筋肉盛って描いてね」
「ほ、ほんと!? すっごい嬉しい! そのまんまの梓乃くんを描くよ、そのまんまの梓乃くんが一番素敵だから!」
由弦はがしっと俺の手を掴んできた。それはもう、きらきらとした目で俺を見つめて。そんな目で見られると、逆に申し訳ない気持ちにすらなってくる。
「いやあ、ほんとに嬉しい。昔から梓乃くんに憧れていたからさ」
「憧れ? 普通に友達だったじゃん」
「そうだけども! 優しいんだけどクールだったからさ、なんだかかっこいいなっていうか」
「クール!? 心当たりございませんけど!?」
由弦の目に、高校生の俺は一体どう映っていたのか。なんだか変なイメージ抱いているんじゃ……なんて考えていると、由弦は過去を偲ぶような、そんな目で俺を見てきた。
「高校時代の梓乃くんはさ、」
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