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「……」
「営業妨害です」
いつものように店を営んでいるときだ。昼になって、裏で少し休憩しようかと思ったとき、ひとりの来客が。白柳だ。顔を真っ青にしながら、じとっと僕を睨んで店の中に入ってくる。
「この人でなしめ……家遠くないんだから迎えに来てくれてもいいだろ」
「横暴な。僕の朝は早いんだよ、あんな時間に外に出たら仕事にひびく」
「ちょっとだろ、いいじゃん!」
「別にこうして普通に今日を迎えられたんだからいいでしょ。しつこいやつ」
「普通じゃねえよ馬鹿!」
だん、と白柳がショーケースの上で項垂れる。頼むからはやく帰れって僕は思ったけれど、白柳はそんな僕のことなんて御構い無し。僕がため息をついて白柳を見下ろせば、やつはバッと顔を上げる。
「あいつ! あいつが……俺の家に……!」
「あいつ?」
「セラだよ、知ってるだろあのクソビッチ! あいつ、昨日俺のことを珍しくキャバクラに誘ってきたと思ったらそのまま俺を潰してきたんだよ! そのまま家に連れ込まれそうになっておまえに助けを求めたのに……おまえが俺を振るから……」
「キャバ嬢の前だからって調子にのって飲むおまえが悪い」
「鬼!」
セラといえば……梓乃くんの友人。梓乃くんとは全然タイプの違う子で僕も初めて見たときは戸惑った。白柳がまだあの子と会っているのかと、なんとも言えない気持ちになる。
「……あの子もよく白柳なんかを追おうとするよね」
「なんかってなんだ! それよりほんとどうにかしろよ!」
「僕には関係ないので。いいでしょ、付き合っちゃえば?」
「おまえのそういうところがダメなんだよ! 恋愛観がほんとクソ」
白柳がボロクソに僕を貶してくる。そろそろ本当に営業妨害になるから出て行って欲しい。
恋愛観がダメとか言われても、よくわからないし。たしかに白柳は僕の恋愛について昔から文句を言ってきていたけれど、今と昔の僕は結構違うと思う。白柳に文句を言われるような恋愛はしていない。
「そりゃ白柳が誰とやろうが付き合おうが僕はどうでもいいからね。僕には梓乃くんがいるから」
「さりげない惚気はいいからほんと助けて!」
そう、僕は梓乃くんと付き合ってから変わったと思う。誰かと付き合っていてもぼんやりとしていた、昔の僕。今とは、確実に違うだろう。
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