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 仕事を終えてから、僕は凛と待ち合わせたレストランへ行った。久々にみた凛の私服は、昔とは少し違う雰囲気になっていた。清楚系だった服が、どこか華やかになっている。昔よりも綺麗になったな、そう思った。 「報告っていうのはね」  こうしてプライベートで凛と話すことは、別れてからはほとんどなかった。だから、今の凛に僕は色々と驚いている。彼女は僕の知っている凛ではなかった。服装もだし、よくみれば化粧も違う。海鮮は苦手だったのに、彼女が今日選んだのはシーフードパスタ。ピンク色のネイルしかしない人だったのに、フォークを動かす指先は、ラインストーンを使ったブルーのネイル。  凛には、彼氏がいるらしい。僕と別れてから、何人かと付き合ったとは聞いていたけれど、今の人とは少し長い。もしかしたらその人に影響されて、今みたいに変わったのだろうか。だとしたら……今の彼は、今までとは、違う。 「私、プロポーズされたの」 「……それ、凛は?」 「……受ける。私、今の彼と結婚する」  凛の言葉をきいて、ああ、と僕は納得した。きっと、今の彼は凛が恋人を亡くしたことを知っているだろう。知ったうえで、プロポーズをした。きっと凛は昔の僕に言ったように彼を拒否しただろうけれど、彼は、きっと。 「嬉しかった。私を幸せにしてみせるって言われて、嬉しかった」  昔の僕とは違って、凛という女を幸せにする覚悟があったのだ。  僕は顔も知らない凛の恋人を、心から尊敬した。意気地なしな僕とは違う、強い彼を。亡くなった恋人を忘れられないと言う彼女を幸せにするというのは、相当な覚悟が必要だと思う。男として、一番かっこいいと思う。 「……ねえ、智駿くん」 「うん?」 「あなたは? あなたは、今……付き合っている人がいるんでしょ? その人と、結婚とか考えている?」  でも――今の僕は、昔よりも成長したと思う。  梓乃くんを好きになって、そして……変わった。梓乃くんと僕の付き合いというのは、亡くなった恋人がいる凛を愛するのとはまた違うけれど、それなりの障害がある。だって、男同士なのだから。家庭を持つという幸せを得る未来を奪うのだから。  でも、僕は。 「結婚は、事情があってできないから、しない。でも――」

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