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「こういうの、久々ですね。智駿さん」  ある日の、梓乃くんとのデート。久々に僕たちは、ラブホテルに来ていた。気分転換というやつだ。最近はのんびりと過ごした流れでセックスをしているから、こうしてセックスをするって意識するのは久々の感覚。なんで僕がわざわざこんなところに来たのかというと、梓乃くんと思いっきりセックスをしたかったから。とにかく今の僕は、梓乃くんを抱きたくてたまらなかった。  なんで僕がこんなことになっているのかというと。凛と食事をしたときの会話が原因となっている。 『結婚は、事情があってできないから、しない。でも――』  あのとき自分で言った言葉に、自分が奮い立たせられたのだった。僕のなかで梓乃くんへの愛おしさが爆発して、とにかく抱きたくなってしまった。 「智駿さん」  バスローブを来た梓乃くんが、僕のとなりに座ってくる。そしてそっと僕に寄りかかってきて、指を絡めてきた。誘惑の仕方も、何もかもが梓乃くんは可愛い。おしとやかなのにすごく色っぽくて。何をしても僕のツボにはいってくるのはなんだかもうすごいなって思うくらい。性格も顔も好きだし、セックスのときの梓乃くんも大好きだから、僕はこんなにも梓乃くんに夢中になっている。  そうだ、いつもの僕ならこんなに一人の人に夢中になったりはしない。それが昔の僕と今の僕の違い。たとえば昔の僕は嫉妬とか独占欲といった感情を知らなかったから、今、梓乃くんにそれらの感情を抱いている僕は、昔とは変わったということになる。こうしておしとやかで色っぽい梓乃くんを他の人には絶対に見せたくないし、僕だけの前で乱れて欲しいって思うのは、今の僕だけ。 「……智駿さん、あの、せっかくこういうところにきたし……」 「ん?」 「すっごく、激しいの……して欲しいです……」 「……どうしようかな」 「え、してくれないんですか?」 「最後には思いっきり鳴かせてあげるよ」 「えっ、智駿さんまたいじわるするんですか、もう」 ――梓乃くん。僕だけの、梓乃くん。本当に可愛くて、愛おしい。いじわるがしたいって思ったのも、梓乃くんが初めてだ。僕の知らない僕を引き出す梓乃くんが、大好き。 「……へへ、」  するりと、梓乃くんがバスローブの帯をとく。恥ずかしそうに顔を赤らめながらも嬉しそうなその表情。僕が思わず見とれていれば、梓乃くんは「あんまりじっと見ないでください」って言って微笑んだ。  白い布が、すとんと落ちる。あらわになる、絹のような綺麗な肌。お風呂に入ってきたばかりでほんのりと血色のいい肌は、やわらかそうだ。本当に綺麗な身体だなあって思う。 「あっ……」  押し倒すと、梓乃くんは淑やかに吐息を吐いて、僕を受け入れる準備をしていた。綺麗だ。ただじっと眺めていたいって思うくらいに、今の梓乃くんは綺麗。このままめちゃくちゃに抱くのはもったいない。 「んっ……智駿さん……」 「マッサージしてあげる」 「あ、……」  綺麗な身体、すべすべの肌。じっくりとそれらを楽しみたい。僕はそう思った。  なにやらアメニティとしてついてきていた、アロマオイル。それを梓乃くんの体の上にたらしてみる。香りは華やかなハーブの匂い。とろみがあって、ローションとしてもつかえそうなものだ。 「力抜いてね」 「ぁ、……、ん……」  梓乃くんのお腹にオイルをたらして手のひらで伸ばしていく。そうすれば梓乃くんの体がてかりを帯びて、妙にいやらしい。梓乃くんの体の形のいやらしさが、てかりのせいで顕著になっている。

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