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「梓乃くん? しーのくん?」 「はっ」  いつものように智駿さんの家でごはんを食べているとき。俺の意識はどこかへ飛んでいってしまっていた。あんまりにもぼーっとしていたものだから、智駿さんが苦笑いをしながら俺に声をかけてくる。 「最近、どうかしたの?」 「えっ? いや、別に……」 「そう? なんだか僕といっしょにいても上の空というか……」  智駿さんはやっぱり……鋭い。俺が自分の将来のことばかりを考えて、「今」に手がつかなくなっていることに感づいている。そう、最近の俺は、将来のことばかりを考えてしまっているが故に、今、自分がやっていることが俺の未来に繋がることなんだろうか……なんてことばかり考えていた。俺が今やっていることは、正しい? 俺はこのままでいいの? そんなことばかりを考えてしまっている。 「……梓乃くん?」 「えっ、あっ、ごめんなさい、またぼーっとしてた……」 「……も、もしかして……僕のこと避けていたりする?」 「し、してないですよ!?」 「……ずっと僕の目をみてくれないから……」  そんな俺を、智駿さんがなんだか寂しそうな顔で見つめてくる。あれ、俺……智駿さんに、寂しい想いをさせてしまっている? 「梓乃くん……?」  なんだか俺……空回りしているような。智駿さんにこんな想いをさせてまで、俺は何をこんなに悩んでいるんだろう。  俺の顔を覗き込む智駿さん。心配そうな瞳に、罪悪感を覚える。 「……智駿さん、俺、ちょっとしばらく一人にさせてください」 「えっ、会わないってこと?」 「……このままだと、智駿さんに嫌な想いをさせちゃいそうで……」  この状態で智駿さんに会っていても、智駿さんに不安な想いをさせるだけなような気がする。それなら、きっちり自分の中の悩みを解決してから、笑顔で智駿さんに会いたい。そう思った。  でも、智駿さんは困ったように笑っている。なんだか……今も、智駿さんのことを傷つけている気がする。 「……違うんです、智駿さんに会いたくないわけじゃなくて。俺、自分のことで精一杯で、わけわかんなくなってて……」 「うん、そっか。たまには、離れてみるのもいいかもね」 「……はい」  智駿さんがぽんぽんと頭をなでてくれた。  泣きそうになった。

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