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「……さむ、」
智駿さんとは、しばらく会わないことにした。
倦怠期とかそんなものではなくて。智駿さんと一緒にして、智駿さんのことしか見えなくて、自分のことが見えなくなってきているんじゃないかって、そう思ったから。智駿さんもそんな俺の気持ちを理解してくれたけれど……やっぱり、智駿さんには失礼なことをしたなあとは思う。でも、だからといってこのままでいることはできなくて。つまるところ、俺はまだまだ子供すぎたし弱かった。
昨夜は、智駿とエッチもしなかった。同じ布団で眠った、それだけ。学校も授業はないから、朝、目がさめてすぐに智駿さんの家を出て、自分の家に向かった。
どこかさみしい朝。肌を冷たい空気が撫ぜて、ちょっぴり寒い。なんだか心にぽっかりと穴が空いたような心地だ……しばらく歩きながら、そう思っていた。が、駅の近くに差し掛かった時だ。
「おはよ、お兄さん」
「……へ?」
電柱の影から、誰かが出てくる。さらっとした明るい色の髪の毛、細身の体にだぼっとした服。このシルエット……どこかでみたことあるぞ。嫌な予感が俺の中に生まれでて。そして、こちらを向いた「彼」に、俺は反射的に「うわっ」なんて声をあげてしまった。
「せ、……セラ!」
「俺のこと拾ってくれない? 帰る気力なくて」
「やだよ、自分の家に帰ってください!」
前に俺のことを散々振り回した、売り専ビッチくん・セラ。しばらく会わないでいたからどこかのヤのつく自由業の人にでも買われたかと思っていたけれど、前にあった時と変わらず飄々としている。
「お願い、梓乃くん。俺、久々に梓乃くんと会いたくて」
「……甘えても無駄だからな、セラと一緒にいるとろくな事がない」
「梓乃くーん! ねえねえお願い! 俺、梓乃くんのこと大好きなんだってば! お願い!」
「くぅ、……」
セラと一緒にいた数日間の苦労と思い出して、俺は首を横に振ろうとした。でも、率直に「好き」なんて言われて、嬉しくないわけもない。決心が鈍ってうんうんと唸っていれば、セラがぎゅっと俺の腕にしがみついてくる。
「……今日だけだからな」
「やったー! 大好き、梓乃くん!」
くそ、ちょっとだけ可愛い。
結局セラをうちに連れて行くことになった俺は、なんだかんだ甘い自分を殴りたくなった。
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