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「梓乃くん、珍しいんじゃない?  こういうことするの……」 「ん……そうですか?」 智駿さんが頭を撫でてくれて、俺は気持ちよくなって目を閉じた。智駿さんの撫で方は本当に優しくて、触れられたところから溶けてしまいそうなくらい。 俺は、上半身の服を脱いでもらった智駿さんに覆いかぶさって、その首元に顔をうずめていた。ちゅ、ちゅ、と何回も何回も、肌を吸い上げる。うっすらとついた痕をみて、胸がじわりと熱くなるような高揚感を覚える。 智駿さんの肌に、たくさんのキスマークをつけていた。智駿さんは俺にしては珍しいこの行動におやおやとなっているみたいだけど、俺も偶にはこういうことをしてみたい。 「上手く付けられてる? その位置だと僕から見えないよ」 「ん……智駿さんみたいに上手くできない…… 」 「あはは、がんばって。あ、でも、あんまり上につけちゃだめだよ。パティシエがキスマークちらりはマズイからね」 「キスマークのぞかせるパティシエっていうのもそそりますね……大丈夫です、服で隠れるところにします」 キスマーク。俺は付けられるほうが好きだけど、やってみるとなかなかにいいものだなんて思う。キスマークは独占欲の一種みたいなものだと思うけど……俺も思った以上に独占欲が強いようだ。智駿さんにこうしていっぱいキスマークをつけていると、智駿さんは俺のものって気がしてきてドキドキする。 「梓乃くん、キスマークってつけたことない?」 「智駿さんが初めてです」 「へえ~。それは嬉しい」 「そうですか? 色んな初めてを智駿さんとしてるのに、キスマークがそんなに嬉しいです?」 「キスマークはねえ……ほら、本能というよりは精神的な……なんていうか」 「んん?」 「梓乃くんが他の人には抱かなかった独占欲を、僕には向けてくれるっていうのがねえ、たまらないなって」  言われてみれば、俺は今までのほほんとした恋愛をしてきたから、痕をつけたいと思うまでに強く独占欲を抱いたのは初めてだ。そう考えるとより一層俺が智駿さんと出逢えたことが奇跡に思えてきて、狂おしくなる。  満足いくまでキスマークをつけて、キスマークも上手く付けられるようになってきた頃。智駿さんが俺の頭をくしゃくしゃと撫でながら、体を起こしてきた。 「ねえ、梓乃くん。他のところにもつけてみてよ」 「他のところ?」 「誰にも見えないところとか」 「……、」  智駿さんがベッドの端に、腰掛ける。一瞬、俺は智駿さんの意図する言葉の意味がわからなかったが――いつもの、サディスティックな音色の声に、俺はようやく理解した。  ……なんだろう。すごく、いやらしいというか――官能的なことをさせられる、気がする。  智駿さんの視線に誘導されるようにして、俺はベッドから下りて智駿さんの脚の間に座った。智駿さんの内ももに触れて、智駿さんを見上げれば。智駿さんはにっこりと笑いながら俺の頭を撫でてくる。

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