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「……ここに付けてほしいの? 智駿さん、すけべだね」
「ふふ。梓乃くんがそこにキスマークをつけているところが、見たいんだ」
ゆっくりと、智駿さんのシャツのボタンを外す。はだけたシャツの隙間から、程よい肉付きの、俺の大好きな体がちらりと見えて、それだけで俺の下腹部がずくんと疼いた。あそこがきゅんきゅんとしているのを感じながら……俺は、智駿さんのお腹のあたりに唇を寄せる。
「んっ……」
智駿さんの指が俺の首をすうっと撫で上げてきて、ゾクゾクっとして、俺は思わず声をあげてしまった。髪を梳かれたり、耳のナカを撫でられたり、絶妙な優しさで智駿さんは撫でてくる。キスマークをつけているのは俺で、どちらかと言えば俺が責めているものだと思っていたけれど……これじゃあやっぱり俺が責められている側な気がする。
独占欲を引きずり出されて、智駿さんだけに独占欲を抱くように、もっと強い独占欲を抱くように――智駿さんに堕とされている。
「梓乃くん。顔、いやらしい」
「あっ、……」
誰も知らない、俺だけが知っている、智駿さんの見えない場所。そこにキスマークを付けて、そして敏感な部分を指先で愛撫されて――直接的な快楽とは違う、脳みそが溶け出してゆくような、そんな麻薬的な快楽を俺は覚え始めていた。
「は、ぁ……」
無意識に、吐息が漏れる。智駿さんに見つめられながら、智駿さんの見えないところにキスマークをつけているのに、興奮した。ズボンのホックを外し、ファスナーを下げて、少しだけ智駿さんの腰を露出させる。おへその下のあたり、腰骨のあたり、そして恥骨のあたり……そんなところに俺は、吸い付いていた。
夢中でキスマークをつけていたから、どのくらいつけていたのかわからなかった。ふと、ちゃんと痕は残っているのだろうかと少しだけ顔を離して智駿さんの下腹部を見てー―俺は、かっと顔が熱くなるのを覚える。智駿さんの、腰のあたり。筋がくっきりとしていてちょっと色気のあるそこに、俺の付けた赤い痕が、いっぱい。
「あっ、……いっぱい、……つけちゃった……」
普段優しくて穏やかで、素敵なパティシエの智駿さん。そんな智駿さんの下腹部に、たくさんのキスマーク。正体不明の倒錯的な興奮が、一気に俺の中に大きな波になって押し寄せてくる。
「ふふ、梓乃くん。だから、その顔、いやらしいってば」
「えっ……」
ドキドキしてきて、頭がぼーっとしてきて。なんだかとろんとしてきたとき、智駿さんの手が俺の顎をつかむ。そして、くっ、と上を向かされて――俺を見下ろす智駿さんと、目が合った。
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