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シャワーを浴びてくると言って浴室に消えて行った窪塚さんを、俺はソファに寝転がって待っていた。しかし、正直なところ、これからするらしいセックスにはあまり興味が持てない。というよりも――セックスそのものに、興味が持てない。だからなんとなく憂鬱で、早く帰りたいという気分になってしまう。
少し前までは、セックスが好きだった。いや、セックスに依存していた。昔されていた性的虐待のこともあって色々と狂ってしまったらしい俺の頭は、酷い被虐趣味を患っていた。だから、体を悦んで売ってたし、セックスだってたくさんしていた。
……が、今の俺は特にそういうこともなく。
セックスがあまり好きじゃない。できるなら、したくない。セックスがすごく苦手だ。
その、理由は――……
「――おまたせ、セラ」
「あっ……待ってましたよぉ、窪塚さん!」
戻ってきた窪塚さんが、にっと白い歯を見せて笑う。その笑顔で、たくさんの女の人を堕としてきたんだなあと思いつつ、俺は立ち上がった。
「じゃ、窪塚さん」
俺も笑いかければ、窪塚さんが困ったような顔をして笑う。その顔はなんだよ、と突っ込みたくなったが、余計な対話をするつもりもないので俺はそのまま彼に抱き着いた。
「……、セラ」
「はい?」
抱き着いた矢先、窪塚さんが掠れた声で俺を呼んでくる。セックス前の声にしては妙に重々しくないか、と不信に思って顔をあげてみれば……窪塚さんが俺を見下ろして、むっとつまんなそうな顔をしている。
オマエから誘ってきたんだろぶっ飛ばすぞ、と言いかけたのを飲み込んで、小首をかしげて見せた。何か気に障ることしてしまいましたか?、と。
「おまえさ、俺の前でそんな風に猫かぶらなくてもいいよ」
「……!」
――何を言い出すのかと思えば。俺は窪塚さんが言ってきた言葉に、心の底からのため息をつきそうになった。猫かぶる、って。貴方に俺のスタイルについて口出される謂れはないんですけど。
俺は円滑な人間関係且つ「浅く」広い人間関係を築くためにこういう風に話しているのであって、窪塚さんに対して素で話す理由が何一つない。なぜかといえば、窪塚さんも俺にとっては「浅く」付き合いたい人だからだ。
深く付き合っていくこと――それは、俺が一番避けていること。
「猫かぶってるわけじゃないですよ! 俺のひとつの一面だと思ってください」
「……じゃあ、俺にほかの一面を見せてくれよ」
「はい~?」
――何言ってんだこの野郎、そういいだしそうになった唇を、塞がれた。
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