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「あっ……、お、おはよう……ございます……白柳さん……」  白柳さんが苛立ち気にじろりと俺を見つめる。寝起きの白柳さんが機嫌が悪いのはいつものことなので、こうして睨まれてもどうということはないはずなのだが……今日は、いやにこの目つきを怖く感じる。    俺と一緒にベッドになんていたくないよな、なんて考えて、「日も落ちてきましたね」と帰宅を促してみる。気を遣ったというよりは、彼のほうから「帰りたい」と言われると傷つくから先制をとっただけなのだが。 「白柳さん、明日は仕事ですよね。暗くなる前に帰ったほうが」 「……暗くなるって……まだ四時じゃねえか」 「家につくころには夜になりますよ」 「……それは、……そうだな」  彼に俺を突き放す言葉を言う隙をつくらせないように、彼をベッドから引っ張り出した。彼は怠そうに起き上がって、のろのろと床に散らばった服を身につける。  俺は、着替えている彼に背を向けて、気にしていない風を装うためにスマホを弄る。けれど、適当にSNSを開いてはみたが、流すように画面をスクロールするだけで文字は何一つ頭に入ってこない。  俺、何がしたいんだろう。白柳さんにどうして欲しいんだろう。やっぱり俺って、おかしいんだな。白柳さんも迷惑しているだろうな。  考えれば考えるほど憂鬱になってきて、画面のスクロールすらもできなくなってくる。 「……なあ、セラ」

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