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どす、と音がして、ベッドが揺れた。振り向けば、下だけ履いた白柳さんがベッドの端に座っている。
「期待外れだったかな」
「――え、……な、……何、……」
「いや、俺、セラにとって期待外れの男だったかなって」
「……?」
一瞬、俺が「期待外れ」と言われているのかと思ってギクリとした。そうではないとわかってホッとしたが、彼が何を言いたいのかがいまいちわからない。
白柳さんはハアとため息をついて、俺を見る。少し、新鮮な表情に思えた。この人は、なんだかんだおおらかで、他人のぐちゃぐちゃしたものをまとめて呑み込んでくれそうな、そんな人だと思っていたから、こうして彼自身の憂鬱そうな顔は珍しく思ったのだ。
「俺は、おまえのことを少しはわかっているつもりだったんだよ。不器用ながらも空を飛んで、どこかへ飛んでく鳥のようなやつだと思っていた。だから、おまえが飛ぶことを邪魔しないように……俺は、止まり木でいようとしていたんだ」
「止まり木……」
そう言われてみれば、彼は「止まり木」のような人だ。
積極的に他人に関わろうとしないけれど、頼られれば頼られてくれる。俺も、そんな彼の距離感に居心地の良さを感じていた。俺がこんな人間だから、適度な距離をとってくれて、それでいて俺のことを受け入れてくれる……そんな彼のことが好きだった。
「でもなあ……気付いたら俺、おまえのこと、撃ち落とそうとしていたわ。一丁前に嫉妬したりしてさ、ダセェのなんの。悪かったな、幻滅しただろ」
「……」
……言葉が、でてこなかった。
白柳さんは、俺のことを嫌いにはなっていたかったらしい。しかし、それがわかってもなお、俺は恐怖が収まらなかった。
俺が白柳さんに求めていた感情を、白柳さんが持っていることに恐怖を抱いていたのだ。
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