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「あ……」
咄嗟に、俺は窪塚さんの手を掴む。つい顔を逸らしてしまった自分が憎たらしくてたまらなかった。
「い、今のは……違うんです……気にしないでください……」
「……セラ」
「窪塚さん、はやく」
なぜ顔を逸らしてしまったのか。そんな理由は一番自分がわかっている。俺はまだ白柳さんに未練があって、もう一度白柳さんに会いたかったのだ。おこがましいにもほどがある。彼を傷つけたくせに、ずいぶんと自分勝手だと思う。だから、そんな自分が憎たらしくてたまらない。
窪塚さんにねだれば、彼は少しだけ顔をしかめた。たぶん、俺の考えていることはわかっている。
「続けて、窪塚さん……このまま、俺のこと、窪塚さんのものにしてください……」
「……おまえは随分と、……」
ばかだなあ――そう言って、窪塚さんは俺に口づける。
窪塚さんはキスが上手い。こうして唇を奪われれば、体が熱を持つ。心が少しひりつくだけで、ちゃんと俺は彼のキスで感じている。ああ、これでいい。このまま、何もかもがどうでもよくなればいい。
「ん、……ぁ、ふ……」
結合部をこねられるようにして、ねちねちとゆるいピストンをされる。蕩けるようなキスも相まって、頭がぼんやりとしてくる。本当にこの人は、セックスが上手い。心がついていかないというのに、体はすぎるくらいに感じてしまって、気付けば俺の腰が勝手に揺れている。
抱きしめられ、俺は抱きしめ返して、お互いに腰を揺らす。おかしくなるくらいに気持ちいい。そう、このまま、もっと溶かしてほしい。
「ぁ、……ん、……んん……ぁん……」
ああ、俺はどうしたいんだっけ。セックスの熱はあまり好きではなかったはずだけれど。胸が苦しくて、結局セックスに逃げている。どこへ行っても、逃げても、結局は行き止まりにぶつかって、戻ってくる。俺はどうしても自由にはなれない。たぶん……生まれた時から、決まっていたのかなあ。なりたくて、「ふつうじゃない」になったんじゃないんだけど。
「んっ、んっ……ん、ん、ん、」
ぐ、ぐ、とねじ込まれた奥のほうを押される。じわじわと肉壁に蕩け落ちるような快楽が広がっていって、ぴくぴくとなかが収縮を始める。
ああ、イク……イきそう……。
かりかりと窪塚さんの背をひっかくと、窪塚さんがぎゅうっと俺を強く抱きしめてきた。その瞬間、ぎゅーっと強くペニスを押し込まれて、ゾクゾクと体の奥が震え、濡れるような感覚に貫かれる。
イク――……
「ん――……」
ビクッ、と大きく腰が跳ね、そして断続的な快楽の波が俺の中でうねり回った。体が勝手によじれ、ガク、ガク、と腰が揺れ動くが、窪塚さんが全身で俺の体を押さえつけていて俺は快楽を逃がすことができない。窪塚さんの肉体に体をこすりつけるようにして、俺は彼の腕の中でもだえるしかできなかった。
「あ、――……」
零れた吐息を最後に飲まれ、窪塚さんが体を起こす。彼はじっと俺を見つめてきて、何を考えているのかわからない。
そっと、窪塚さんの手が俺の目尻に伸びる。するりと指でそこを撫でられれば、自分が泣いていたのだと気付いた。
「おまえってやつは……」
「……?」
ふっと窪塚さんが笑う。くしゃっと笑ったその顔が優しくて、ああ、また、心がひりひりする。
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