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第2話
ーーここ1年くらい続く、温かで幸せな日常風景だ。
英 龍磨(はなふさ りゅうま)とは、幼稚園からの付き合いで、いわゆる幼なじみだ。小さい頃はクリクリした瞳に真っ白な肌、少し長めの髪型をしており、まるで女のようだった。名前と外見のギャップに皆から『はなちゃん』と呼ばれていて、俺も小学生までそう呼んでいた。
高校まで一緒で、一番仲が良かった。
けれど、大学は別々になって、会うことも少なくなった。そして、その大学で甲斐人の母親になる女と出会い、大学卒業と共に妊娠が発覚した彼女と結婚した。
バタバタはしたけど、楽しくて幸せに溢れた生活だった。
それなのに、1年半くらい前、妻は家を出ていった。始めたパート先の店長と浮気をし、離婚したのだ。
『あなたと居ると息苦しいの』
と、浮気しといて俺のせいにしやがった。
ちゃんと金を稼いで、妻が働かなくてもやっていけるくらいには余裕のある生活をさせていた。休みの日は家族サービスに、時々、夫婦だけの時間も作った。
ーーーそれなのに、女はいつだって俺を好き勝手弄んで捨てていくんだな。
そう、しみじみ思っていたところに、高校の同窓会に誘われ、そこで英と再会したのだ。俺の結婚式に仕事の都合で英は来られなかったので、大学を卒業する少し前に会った以来だった。
久し振りに会った英は、小さい頃の姿に似ていた。女に見られないようにと髪を短くして男っぽくしていたのに、髪は肩まで長くなっていた。さすがに体つきから女には見えないものの、少し中性的な雰囲気に不思議な感覚を覚えた。
けれど、話すと昔のままで、やっぱり英と一緒にいるのが一番落ち着くんだと思った。
俺が離婚して、シングルファーザーなのを伝えるとフリーのライターで比較的自由に時間を使えるからと、家事や育児の手伝いを申し出てくれた。
そうして、この幸せな日常が始まった。
小さい頃から一緒で、俺の性格も味の好みも知り尽くして、男同士の気軽さもある。
浮気されて別れたショックも、男一人で子どもを育てる大変さも、英のおかげでなくなった。
「じゃあ、俺、カイを寝かしてくるね」
「おう、おやすみ、カイ」
「やだぁ!パパとあそぶ!」
「明日戦隊ショー見に行くんだろ?はやく寝ないと朝起きられなくて、見られないよ?」
「~~、ねる」
「ん、良い子」
二人のやり取りに、思わず笑いが漏れる。
「なに?」
「いや、なんでもねぇよ」
幸せだなと思っただけだ。
この生活がずっと続けられたらいいとも思う。
こんなに気が合って、空気みたいな存在なのに、どうして、英と会わなくなったんだっけ?
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