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第2話 大きな麦わら帽子がやってきた
二、
ー大きな麦わら帽子がやってきたー
「 ハルト!起きてくれ、入港するから 」
秀樹さんの声が聞こえた。
慌てて身を起こすと陽の光は赤みを帯び風はだいぶ涼しくなっていた。
立ち上がって前を見ると、大島の波浮の入り江が目の前に見えて来ていた。
「 ごめん、すごい寝てた 」
素直に秀樹さんに謝ると、
「 ほんと、二人して寝ちゃうから、俺は頑張って船漕ぎながら舵を握る羽目になったよ 」
笑ってるけど秀樹さんに悪いことしたな。
遠い陸(おか)に赤色がチラチラと見えるのは、ハイビスカス?
あ〜〜陸だー。
海にないものは二つ
緑と花。
遠く島を海原から見る緑、それに花があるってワクワクする。
「 ハルト、機走するぞー 」
秀樹さんがセルを回す。
それからは入港の作業に忙しくなる。
連休のせいで波浮の港には先着の船が何艘かもう止まっている。その一番端に船を入れると舫をとってアンカーリングをする。
ここまでやってやっと一息つくと、秀樹さんが葉ちゃんを起こしにいくのかキャビンの中に入っていった。
又さっきのモヤモヤが少し帰ってくる。
その時、桟橋の上から声がかかった。
「 ウェイブですか?この船は 」
その声の主は大きな身体で今時珍しい麦わら帽子を被った少しむさ苦しげな男だった。
ちょうどキャビンから出てきた秀樹さんの声がそれに答える。
「 要さん、うっす!早かったね 」
「 あぁ、昼過のジェット船に乗ったらさっき着いたんだよ 」
「 波浮までタクシーで?」
「 いやちょうど漁師のおっさんが波浮に帰るとこだったから乗せてもらった 」
「 え?そりゃラッキー!5000円くらい得した?」
「あぁ持ってたカップ酒一つお礼で 」
二人で笑いあった後、
「 そうだ、ハルト、その人が要さん、
俺の友人 」
「 要さん、ハルト、この船のオーナーの坊ちゃん 」
ひどい言われように訂正する。
「 この船主は僕の父親です。
僕は息子のハルトです 」
「 よろしく、秀樹の、、友人の要です 」
それからは夕飯の話になる、今から堤防で釣りをすると言う要さん。
釣竿をしっかり持ってきたらしい。
「 それで麦わら帽子?」
と僕が尋ねると、
「 そうそう、釣りしながらひねもすのたりのたりかな 」
と豪快に大きな手で麦わら帽子を僕に被せて笑って見せた。
この人の笑い顔、豪快。
そして帽子からする男の匂い、なんだかとても頼りになる気がする。
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