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第6夜③
ティッシュをポイっとゴミ箱に投げ入れると、その手は僕の顎をつかんで引き寄せる。
勿体ぶるように僕の唇を触っていた親指が、口内に侵入してくる。唇を割り開き、歯列をなぞり、奥へ奥へと進んでくる。
舌先をくすぐって、口の中を余さず刺激する。指をスッと抜き取られると、物欲しげに舌を出して追いかけてしまう。
チュッ…
おでこに触れるだけの軽いキスをしてから、彼は軽々ぼくを抱き上げてベッドに運ぶ。
向かい合うように抱き合うと、先程まで口内で蠢いていた指が、今度はナース服の裾をめくって、尻の間にある蕾を撫でる。
唾液で濡れただけの指は、後孔を慣らすには心許ない。
しばらくの痛みを覚悟して目をきゅっと閉じる。
焦らすように何度も撫でられ、浅いところで出し挿れを繰り返されると、自然と腰が揺れる。
「……っ ぁん、」
甘い声を洩らしながら、彼の指を奥へ奥へと誘うが、なかなか侵入しない指は、もどかしく切ない。
じっくり、時間をかけてそこを解す。二人だけしかいない室内は静かなもので、水音と、二人の息づかいだけが響いて倒錯とした気分になる。二人きりの甘い時間に、先に痺れを切らしたのは自分のほうだった。
はやく、彼がほしい。
「も……ぃ、から…
はやく、これ、」
急かすように彼のペニスを擦る。彼の逞しい男根は、1度出したくらいで収まるソレではない。
「せっかくナースのカッコしてるんだからさ…言ってよ、お決まりのセリフ」
そう、お願いされたのだ。
はぁ…。こういう、いつまでも少年の心を忘れないところは好きだけれど。こうもベタな言い回しは少っ恥ずかしいことこの上ない。
「なぁ…お願い?」
いつもよりずっと甘く、少し掠れた声で囁かれると、下腹部がキュンっ…と痺れた。
「……っ」
こうやっておねだりすれば、僕が断れないと分かっていて。この男はほんとうに。
わななく口で、恐る恐る言葉にする。
「ぼ……くのココに、おっきいお注射、くださいっ」
両手で尻朶を割り開いてそう口にすると、彼はチロリと赤い舌を見せた。普段は爽やかな好青年である彼の、獰猛で野性的な部分を垣間見た気がした。
「入れるよ」
そう呟いて、腰を進める彼。さんざん焦らされた後ろは、お望みのものをやっと貰えた充足感に、ヒクヒクと痙攣して悦んでいる。
「ひ…ぁ…んっんっ」
しっかりと繋がった後も、今日はじっくりと味わいたいらしく、しばらくユサユサと体を揺すっては休憩し、また律動を再開する。
なかなかイケないもどかしさもあるけれど、見つめあって、ひとつに溶け合う嬉しさが勝った。たぶん相手も、同じ気持ちのはず。そうだといいな。
長い時間そうしていて、すっかりグズグズになってしまったアナルに、彼の獰猛なソレが激しく打ち込まれる。
「ぅあっんっっんっ」
「も…ハッハァッ限界かも。イキそ。」
ピストンが激しさを増し、やがて薄い膜越しに、温かい液体が出されるのを感じた。僕も、彼とほぼ同時に、精を迸らせた。
じっくりと時間をかけて愛でられた体は、心地よい倦怠感に包まれ、急激に眠気が襲ってくる。
隣でゴムを括っている彼を見ながら、瞼がだんだん閉じていく。
フッと、おでこに彼の唇が当たった、ような気がした。
「おやすみ。遥、愛してる」
彼がそう言ったのは、夢か現か。
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