26 / 27

第6夜③

ティッシュをポイっとゴミ箱に投げ入れると、その手は僕の顎をつかんで引き寄せる。 勿体ぶるように僕の唇を触っていた親指が、口内に侵入してくる。唇を割り開き、歯列をなぞり、奥へ奥へと進んでくる。 舌先をくすぐって、口の中を余さず刺激する。指をスッと抜き取られると、物欲しげに舌を出して追いかけてしまう。 チュッ… おでこに触れるだけの軽いキスをしてから、彼は軽々ぼくを抱き上げてベッドに運ぶ。 向かい合うように抱き合うと、先程まで口内で蠢いていた指が、今度はナース服の裾をめくって、尻の間にある蕾を撫でる。 唾液で濡れただけの指は、後孔を慣らすには心許ない。 しばらくの痛みを覚悟して目をきゅっと閉じる。 焦らすように何度も撫でられ、浅いところで出し挿れを繰り返されると、自然と腰が揺れる。 「……っ ぁん、」 甘い声を洩らしながら、彼の指を奥へ奥へと誘うが、なかなか侵入しない指は、もどかしく切ない。 じっくり、時間をかけてそこを解す。二人だけしかいない室内は静かなもので、水音と、二人の息づかいだけが響いて倒錯とした気分になる。二人きりの甘い時間に、先に痺れを切らしたのは自分のほうだった。 はやく、彼がほしい。 「も……ぃ、から… はやく、これ、」 急かすように彼のペニスを擦る。彼の逞しい男根は、1度出したくらいで収まるソレではない。 「せっかくナースのカッコしてるんだからさ…言ってよ、お決まりのセリフ」 そう、お願いされたのだ。 はぁ…。こういう、いつまでも少年の心を忘れないところは好きだけれど。こうもベタな言い回しは少っ恥ずかしいことこの上ない。 「なぁ…お願い?」 いつもよりずっと甘く、少し掠れた声で囁かれると、下腹部がキュンっ…と痺れた。 「……っ」 こうやっておねだりすれば、僕が断れないと分かっていて。この男はほんとうに。 わななく口で、恐る恐る言葉にする。 「ぼ……くのココに、おっきいお注射、くださいっ」 両手で尻朶を割り開いてそう口にすると、彼はチロリと赤い舌を見せた。普段は爽やかな好青年である彼の、獰猛で野性的な部分を垣間見た気がした。 「入れるよ」 そう呟いて、腰を進める彼。さんざん焦らされた後ろは、お望みのものをやっと貰えた充足感に、ヒクヒクと痙攣して悦んでいる。 「ひ…ぁ…んっんっ」 しっかりと繋がった後も、今日はじっくりと味わいたいらしく、しばらくユサユサと体を揺すっては休憩し、また律動を再開する。 なかなかイケないもどかしさもあるけれど、見つめあって、ひとつに溶け合う嬉しさが勝った。たぶん相手も、同じ気持ちのはず。そうだといいな。 長い時間そうしていて、すっかりグズグズになってしまったアナルに、彼の獰猛なソレが激しく打ち込まれる。 「ぅあっんっっんっ」 「も…ハッハァッ限界かも。イキそ。」 ピストンが激しさを増し、やがて薄い膜越しに、温かい液体が出されるのを感じた。僕も、彼とほぼ同時に、精を迸らせた。 じっくりと時間をかけて愛でられた体は、心地よい倦怠感に包まれ、急激に眠気が襲ってくる。 隣でゴムを括っている彼を見ながら、瞼がだんだん閉じていく。 フッと、おでこに彼の唇が当たった、ような気がした。 「おやすみ。遥、愛してる」 彼がそう言ったのは、夢か現か。

ともだちにシェアしよう!