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第5話
「シェン、すげえな。ドラッグ密売の取引と組織の壊滅だろ。それ、シルバー勲章モノだろ」
宿舎の食堂で同僚のエンデに声をかけられ、シェンは顔を曇らせた。
「オレの手柄じゃねえよ。あの中隊長が全部やった。オレは奴の指示に従っただけで、何もしてねえ」
それどころか、最初に宣言した通り上にはすべてシェンの功績として報告してしまったのだ。
恩着せがましい真似をされた気になって、酷くイラついていた。
「へえ。あの中隊長、使えるんだ」
「そうだな。実際すげえよ。.....オメガとか嘘だろ」
体格も何もかもが劣勢遺伝子には思えない。
しかも、昨日は事情聴取は任せたと言ってさっさと帰ってしまったのだ。
手柄を寄越した分、当たり前のことだが何だか馬鹿にされてる気分でいっぱいだった。
「弱みとかもなさそう?」
「そうだな。ムカつくけど、完璧だな。オメガだって自分で言ってたが、それがヤツの唯一の弱みじゃねえかな」
目の前のパンを齧りながら、最初から狙っていたような様子が気になっていた。
あまりに情報が的確すぎる。
「発情期狙って輪姦でもする?」
「.....趣味悪ぃな。綺麗な可愛らしいオメガなら歓迎だけどな。ベータだし、同調もしないから抱きたいとかないだろ」
あんな体格でよく嫁に行きたいとか言うよな。
無理だろ。
心の中で毒づいて、食べ終えた皿を手にして配膳台へと向かう。
「シェン·リァウォーカー居るか?」
快活な声が食堂に響き、振り返ると件の中隊長が扉の前に立っていた。
馬鹿にしたような態度は気に入らないが、どうにも仕事が出来る上官だし、従わなくてはならない。
「ハイ。いますよ」
軽く手をあげて返事をして近づくと、腕をぐいと掴まれた。
「これから、潜入捜査行くからついてこい」
有無を言わせぬ強引さで、統久はシェンを引き摺るように、宿舎を出た。
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