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第54話
気を失っているウォンバットの身体を縄で巻いて、ゆっくりと先に地面に降ろす。
万が一意識が戻ったとしても、手錠を手脚につけたので逃走はできない。
「統久、さん。自分で降りれるか」
「さっき、問題なかったから大丈夫」
返事をすると窓枠から、足場を探して難なく下に壁を降りていく。
本能ってすげえなと感心しながらシェンも壁を降りていき、地面へと到達する。
建物を見上げると業火に包まれていて、さっきまでいた窓枠からも火の手が見える。
「ご主人様、俺、早くご褒美ほしいな」
何事もなかったかのように擦り寄る統久からは甘い香りが漂っている。
「仕事が終わったらな。こいつを仲間に渡さないと」
ぐるりと視線を向けると、囚人達を集めている男達を見つける。
制服は見慣れた第73部隊のものである。
「おい、エンデ。悪い、これがホシだ。こいつあげたのお前の手柄でいいから、本部に受け取りを掛け合ってくれ。報告は本部の総監にしてある」
「シェン、話がいきなりで全然見えねえけど。うわ、中隊長さん?うわあ、色っぽいなあ、なに、これ、フェロモンだろ、やべえな」
興味をもったのか、エンデはシェンの腕にしなだれかかっている統久を覗き込む。
「こいつはオレの報酬なの。あとで、女何人か紹介してやるからさ」
「マジで、女とかめちゃくちゃ希少じゃん。つか、こんなでっけえホシとか、マジで困るからね。お前につけちゃうぜ」
エンデはウォンバットの顔を確認してから、それを肩に担いで後ろ手に手を振る。
「なあ、ご主人様。俺は外でもいいんだけど、我慢したくないな」
ついついと腕を引いて甘える様子は普段の彼なら絶対にしないので、うっかりそこで襲ってしまいたくなるが、シェンは無言で腕を掴むと、遠野から借りた最新鋭の戦闘機に統久を押しこみ、コクピットに乗り込んだ。
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