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その点、アルファだと安心だ。
メグ先輩に発情することもなければ、邪魔になることもないだろう。
そばにいるために、俺はアルファにならなければならないのだ。
「ハルがアルファに拘る理由も、番いたくない理由もわかった。その上でひとつ、注意が必要だ」
そういうと、まーやんは机に伏せていた本を再度俺に手渡した。
俺が持ったのを確認すると、まーやんは文章を指さす。見ると、それは先程の文章の続きだった。
それにより、アルファになる確率が格段に上昇することでしょう。アルファが希少種に近ければ近いほど、優れた効果を示します。
ただし、過剰なまでのフェロモンを浴びた場合、そのフェロモンに発情してしまうでしょう。アルファのフェロモンによる発情は反対の性、つまりオメガの発情を誘発します。強すぎるアルファのフェロモンによってオメガの発情が起これば、アルファにはなれず、オメガとして性が確定します。
アルファに協力を要する場合には、上記のことに十分気をつけましょう。互いが理解しておくのも大切です。
「読めたか?」
「あ、うん」
「お前は今、かなりアルファに近い位置にいる。メグ? ってヤツのフェロモンならすぐにでもお前をアルファにできる」
「まじで!? じゃあメグ先輩にお願いしよっと」
「お前ならそうすると思ったわ」
本をとられ、呆れたように笑うまーやんから直々に薬袋を手渡された。
『発情抑制剤・鎮静剤:オメガ』。薬袋に書かれた文字に、首を傾げる。
アルファになるのに、なんでオメガ?
「ソイツがフェロモンの調節をちゃんとしてくれるなら問題はねぇ。だが、してくれるとは限らないだろ?」
「メグ先輩ならしてくれると思うけど」
「どーだかな。万が一オメガの発情までされた場合を想定して、効くかわからないが薬は渡しておく」
万が一、だもんな。
もらえるものはもらっておこうと、なにも言わず受け取ることにした。
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