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 話も落ち着き、そろそろ帰れとまーやんに言われた。  チラリと時計を見ると、二十一時のちょっと前。メグ先輩の家に帰る頃には二十一時半になりそうだ。  診察室を後にしようとした俺の背中に、まーやんが「ハル」と一言俺の名前を呼んだ。振り返ると、やっぱり通常運転の気だるそうなまーやん。 「番うのが本気で嫌なら、死ぬ気で拒め」 「……? そりゃ、もちろん」 「ただ欠片でも番っていいと思うなら、素直になれ。さっさと堕ちろ」 「え、なにその言い方……。怖いじゃん」 「はは。じゃあ、またなんかあったらこいよ」  とん、と背中を押されて診察室から追い出される。  後ろで閉まった扉の音が聞こえて、俺もさっさと会計済まそうと歩き出す。  暗い夜道の帰路の中、まーやんの意味深な言葉の意味を考える。アルファになるってもうわかっているのに、なんであんなアドバイスを俺にしたのだろうか。  ぐるぐると思考を巡らせて、ふと、至極どうでもいいことを思った。  アルファ用の薬、もらってない。

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