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 これまでの付き合いで、少しはメグ先輩の性格もわかってきてはいる。メグ先輩は、あまり自分の前にはった境界線から先を、そう簡単に越えさせてはくれはくれない。俺はまだまだ信用するまでには至ってないのだ。  そう思うと少しだけ悲しい。そんな気持ちが顔に出てしまっていたのだろうか、メグ先輩が俺に手を伸ばし、するりと頬を撫でてくれた。 「そんな顔しないで。秘密にしてるわけじゃないから」 「教えてくれないの?」 「ふふ、可愛いなぁ」 「……っ」  メグ先輩の口から溢れた言葉に、何故かピタリと思考が停止した。  耳に溶け込む柔らかな声色。慈愛に満ちた優しい微笑み。指先から伝わる体温。むせ返るような強く甘い香り。  全てが幻のような、そんな感覚。  こんなにも美しく神聖な人が本当に存在しているのだろうか。俺は長い夢を見ているのでは? 触れれば消えてしまう幻想を見ているんじゃないか?  熱い。  身体の芯から徐々に帯びてきた熱が、身体全体を蝕もうとしている。  あぁ、どうしよう。熱くてしんどくて、まるで力が入らない。 「メグ、先輩」 「ん? ……あぁ。ほら、もっとそばにおいで」  助けを乞うようにメグ先輩の名前を呼べば、香りに負けないくらいの甘さを携えた声と微笑みが帰ってくる。幻なんかではなかった。  腰に回ったメグ先輩の片腕にぎゅっと力が込められ、引き寄せられた。俺はいとも容易く正座のまま股を広げたような形で、メグ先輩の膝の上に跨った。

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