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「もー、ほんとハルは可愛いね。健気すぎてどうにかなっちゃいそう」
「メグ先輩……?」
「ハルのお願いは全部叶えてあげたいけど、ごめんね」
そう言うと、メグ先輩が俺の額に柔らかく口付けた。
あまりにも突然のことに再び思考が停止する。フェロモンのせいとはまた別の熱が身体を襲う。
メグ先輩、今、俺に……っ。
「俺がフェロモンを出していたのは、ハルをオメガにするためだよ。オメガにして、俺の番にするため」
「……え」
ずっとフェロモンを出していたのは、俺の性を変えるため。
それはメグ先輩も言っていた。まさかその言葉に、そんな思惑が込められていたなんて。
俺を番にする? ……そんなの、ダメだって。
「やだよ……離れたくない」
「俺の運命はハルだよ」
「違う、俺じゃないっ。俺は、"運命"になれなかった……!」
どれだけメグ先輩の"運命"になりたいと願っただろう。
最初はなりたくてなりたくて、仕方なかった。どうして俺じゃないんだろうって何度も考えた。
でも、ようやく諦められた。どう足掻いても無駄だと悟り、その分、メグ先輩の幸せを願うことで自分を慰めることにした。
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