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俺はメグ先輩が大好きだ。こんなにも愛おしくて大切な人を、どうして譲ることができるだろう。
メグ先輩が惜しみなく与えてくれるのは、ただただ甘美で濃厚な無償の愛情。一度味わってしまったからには、もう手放すことなんてできない。
「俺、こんなに幸せで、いいの? 死なない……?」
「ふふっ、遙世はほんとに可愛いね」
「……っ」
よしよしと頭を撫でられながら、慈愛に満ちた微笑みをこぼすメグ先輩。
頬が紅に染まって、少しは落ち着いたはずの身体が再び熱を取り戻す。
「あのさ、恵利さん」
「ん?」
「その……可愛いって、もっと言ってほしいんだけど、だめ? 恵利さんから言われんの、なんていうか、すっごい嬉しい」
メグ先輩に言われると、自分はメグ先輩にとって可愛くて愛すべき存在であり、大切にされているように思える。
もちろん、溢れんばかりの愛情と慈しみは本当にもらえているのだから、いちいち言葉にする必要もないかもしれないが。
それでも、俺はメグ先輩がくれる「可愛い」が大好きなのだ。
メグ先輩は数秒間にわたって黙り込み、穏やかな笑顔で沈黙を打ち破った。
「……とりあえず、二回目いこっか」
「えっ?」
「可愛すぎてだめ。我慢できない」
「ちよっ、待って、せっかく落ち着い……ひぁっ!」
いつの間にか硬度を取り戻したメグ先輩のモノ。突然奥を突かれ、一瞬で頭の 中が真っ白になった。
メグ先輩からは甘ったるい香りが溢れ出している。
それがフェロモンだと気付いた頃にはもう手遅れで、全身を襲う熱に、くらりと目眩がした。
全身の力が抜けて、メグ先輩に抱き着いていた腕がシーツに沈み込んだ。
「遙世ってフェロモンに弱いよね」
「だって、恵利さんのじゃん……。甘すぎ」
「嫌い?」
「大好き」
「ならもっとあげる。だから、もっと遙世を愛させて」
「好きなだけ、どうぞ」
ゆるりと頬を緩ませて、愛される喜びに心が浮つく。
メグ先輩から、優しいキスが落とされた。
俺が暫定ベータだったのは、特別なアルファであるメグ先輩との"運命"のためだったのかもしれない。
なんて柄でもないことを思いながら、ゆっくりと甘い愛情の香りに全てを委ねた。
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