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 相手のいない電話をいつまでも続けている理由もないので、携帯を耳から離して机の上に伏せて置いておく。  そして、ほんの少しの空腹を満たそうと、まだ半分ほど残っているサンドを食べ始めた。  そこでようやく、メグ先輩にまーやんとの通話内容を何一つ伝えていないことに気が付く。 「……あっ! ごめん、メグ先輩。普通に食べてた」 「いいよ全然。面白いよねぇ、ハルって」  メグ先輩はクスクスと笑いながら、頬杖をついてこちらを見てくる。楽しそうでなにより。  手を止めようとしたけど、メグ先輩は「食べながらでいいよ」と言ってくれた。ここは素直に、お言葉に甘えさせていただこう。 「で、誰と電話してたの?」 「まーやん。あ、まーやんっていうのは俺のかかりつけ医で、中学生くらいからお世話になってる人」 「確かにラフな感じで話してたもんね」 「そうそう、友達感覚。それで、発情期のことわかったよ。普通で三日、長くても五日らしい。変化したての発情は不安定なんだって」 「なるほどね。やっぱり短いものなんだ」 「うん」  メグ先輩も納得した様子だった。でも、メグ先輩は元々アルファなわけだし、発情期が終わるのは俺だけではないのだろうか。  ひとつ解決したら、またひとつ浮かび上がる疑問。もしかしてまーやんは、俺がこうして悩むことを見越していたのかもしれない。

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