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 メグ先輩の運転する横顔を十分に堪能して、診療所に到着した。  約束通り、ちゃんとお昼ご飯も持ってきている。  持ってきたのはスープジャーに入れたクリームシチューと、いくつかの種類のバケット、カフェのオリジナルコーヒー。  バケットは焼いただけのもの、ミートソースにチーズを溶かしたピザのようなもの、バターにペッパーを散らして焼いたもの、トマトやきゅうりやハムにオリジナルドレッシングをかけて焼いたもの、計四種類を五つずつ持ってきた。  これらは一人で作るつもりだったが、メグ先輩が手伝ってくれないわけもなく、気付いたら二人で楽しい料理タイムになっていた。  メグ先輩の手が加わったなら味は間違いない。まーやんも満足するはずだ。  診療所の扉を開くと、チリンチリンと鈴の音が鳴る。  その音が耳に届いたのか、私服姿のまーやんが奥から出てきた。 「やっほー、まーやん。私服初めてみた」 「そりゃあな」  私服姿のまーやん、それなりにかっこいい。  ゆるめの白のTシャツの上には黒地に白のストライプのシャツを羽織り、ダメージの入ったデニムスキニー。  そういえば、まーやんはバイトでモデルするくらいにはイケメンだしオシャレなんだっけ。普段は白衣しか見ないだけに、意外さと新鮮味がある。   でもここは診療所だし、衛生面が気がかりだ。 「白衣とかマスクとかしなくて大丈夫?」 「応接室しか使わねぇから問題ないだろ。ほら、こっちだ」 「はーい」  ちょいちょいと手招きされ、素直にその背中についていく。  応接室には何度かお世話になった。暫定ベータについて相談したり、いきなり発情期に入ってしまった時に身をおかせてもらったり。  時が経つにつれて自分でも発情期の管理ができ始めたので、最近はあまり入っていなかったけれど。

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