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診療所を後にして、俺達はメグ先輩の家へ戻ってきた。
家には入ると、どこか安心感に包まれる。張り詰めていた糸がようやく切れた。
でもやっぱり気分は晴れなくて、小さく息を吐く。
キッチンへ行き、バケットを入れていた小さめのパンカゴとバスケットを棚にしまう。スープジャーとマグボトル、コップはシンクに置いた。
「ハル」
「どしたのー?」
洗おうとしたがなんとなくそんな気分でもなく、ぼうっとキッチンに突っ立っていると、メグ先輩の声がリビングから飛んでくる。
とっさに笑みを取り繕ってメグ先輩のほうに行くが、意味がないことくらいわかっていた。
俺が落ち込んでいることくらい、メグ先輩はとっくに気づいているはずだから。
「はい、おいで」
「はーい」
ソファーに座ったメグ先輩が両手を広げて待っている。つまりこれは、以前フェロモンをもらったときと同じ体勢になれということだ。その時に比べればあまり躊躇わないが、やっぱり申し訳なさは消えてはくれない。
けれど、待ってくれているのなら、と腹をくくる。あの時ように、正座のまま股を広げて膝の上に座った。
すると、メグ先輩の腕がすぐに俺の背中に回る。優しく大切に、そっと抱きしめられて、俺も気付けばメグ先輩に抱きついてしまっていた。メグ先輩の肩に額を乗せれば、甘やかな香りがふわりと鼻腔をくすぐる。
これ以上ないくらいの安心感に、心が弱くなっていくのを感じた。
「ハルを不安にさせてるのはなに?」
「……さすがだなぁ」
診療所で頭を撫でられたあの時から、やっぱり気付かれていたらしい。
あぁ、だからか。
メグ先輩が気付いていたことがわかれば、帰りの車の中のことも納得がいった。
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