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けれど、もしも近くだったらどうだろう。
仕事帰りにフラリと寄れる距離ならば、まだ負担も軽くなるのではないだろうか? 完全になくなるとは言えないが、軽減するだろう。
ただ、それを決めるのは俺じゃなくてメグ先輩だ。最終的に判断を下すのは、メグ先輩にしかできない。
「でも近くなんて、無理じゃん……」
しかし、いくら思考を巡らせたところで、それはただの「もしも話」。
実際、ここから最寄りの駅まで徒歩十五分として、さらにそこから七駅先に行ったところが、俺の家の最寄りの駅。
近くだなんて、現実的ではないだろう。
「無理じゃないよ」
「……どういうこと?」
「一緒に住もうってこと」
ふふ、と笑みと共にこぼれた言葉に、俺は一瞬だけ思考が停止した。
一緒に住もう? 俺と、メグ先輩が?
驚きのあまり、俺の気を楽にさせるためについたメグ先輩なりの冗談なのかと思った。
勢いよく身体を起こしてメグ先輩も向き合う。すると、甘やかな瞳と目が合い、ゆるりと柔らかく唇が緩められた。
ずっと……こんな優しい表情をしてたの?
「メグ先輩ー……!」
「ふふっ。もー、可愛いなぁ」
こみ上げてくる喜びと愛おしさを言葉に表すこともままならず、俺は再度メグ先輩に抱きつく。
メグ先輩もそれを受け止めるように、ギュッと抱きしめて笑った。
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