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心に秘めた想い3
「あの……江藤さん。俺との行為に、満足していないんじゃないかなって」
「どうしてそう思うんだ?」
投げつけられた直球に間髪入れず質問してやる。デリケートな内容だからこそ、コイツなりに思うことがあるのか。今やっている仕事も同じように悟ることができたら、俺様の手を煩わせないだろうに――
「だって江藤さんはこういうの……俺と違って、経験豊富なんじゃないかと思って」
「それって、俺様がビッチだと言いたいのか?」
「違っ! 純粋に俺と比べて、経験しているんだろうなと思ったんだ。さりげなく誘導しているから」
頬を染めあげ必死になって喚く姿が、いじらしいというか可愛いというか。お前のこういう一生懸命なところが好きだ。――なぁんて絶対に言ってやらない。これを聞いた途端に、天狗になるのが想像つく。
「もしかして、俺様がはじめての男とか?」
言った途端、更に顔を赤くして視線を右往左往させる。やっぱりなと思いつつも、ちょっとだけ嬉しくなってしまった。
「言っておきますけど、女性との経験はありますからね! それなりにっ!!」
「それなりに、ねぇ……」
「な、何ですか、その顔。疑ってるでしょ?」
「べっつにぃ。ぜーんぜん疑ってない」
(女性経験が数回のコイツが何とか頑張って、俺様を抱いたというわけなんだな)
そっかー。兄弟のはじめてを俺様に捧げさせてしまったのか。――って、これじゃあまるでビッチみたいじゃないか。
「あの俺とのセックス……満足してる?」
たじろぎながらも不安なことを口にしたコイツが、愛おしくて堪らない。胸が熱くなって、きゅんと疼く――
「満足してなかったら、イクどころか勃たないんじゃないのか?」
こんなくだらない話をするのに、わざわざ縛りやがって。
「やっ、それはそうなんだけどさ。時々不満げな顔してるから……」
この言葉にたいして仕事と同じようにダメ出しし、改善させる方法がある。でもそれは、やってはいけないことだろう。ふたり揃って心と身体を解放させ、愛し合う行為に及んでいるんだから。
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