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心に秘めた想い7
苦痛に顔を歪ませている自分に傷跡をつけて笑う高橋を、あのときはすごく憎んでいた。だけどそれ以上にまんまと罠に嵌って、そこから抜け出せなくなった自分自身を一番憎んでいた。
人には言えない過去を持つ俺様は、コイツにこうやって大事にされる存在であっていいのだろうか?
「げっ! 泣き出しそうにしているということは、すごく痛かったんでしょ? 江藤さん我慢強いから、ずっと痛いことが言えなくて、そのままでいたんじゃ――」
「こんなの、ちっとも痛くねぇって。痛いのは俺様の過去の出来事だけだ」
これを暴露して宮本が離れていくなら、それまでだということか。それに、隠したまま付き合いたくないしな。
「江藤さんの過去……。兄貴以外の誰かと、付き合っていたってことなのか?」
「ああ。雅輝と付き合う前に、その男と付き合っていた。ソイツは優しくて、腹立たしいくらいに卑怯な男だった」
俺様の告げた言葉の意味が分からなかったのだろう。首を傾げて、不思議そうな表情を浮かべた。
「その場の雰囲気に見事に流されてその男と寝た挙句に、隙を突かれて卑猥な写真を撮られちまった。それを使って脅されて、無理やり関係を強要されたんだ」
「卑猥な写真って……それって犯罪になるのに」
「まぁな。だけど警察に行く気力も削がれて、もうされるがままの状態だった」
「江藤さん、一体何をされて――」
そこまで口にしてからハッとした顔をし、額に手をやって天井を仰ぎ見る。
「……ごめん。知らなかったとはいえ、縛るなんて行為を恋人にしちゃいけなかった」
「気にするな。お前は何も知らなかったんだし」
「だけど! さっき俺が江藤さんを縛ったときに、ソイツのことを絶対に思い出したろ。こんなことよりも、もっと酷いこととか……」
最初は威勢のよかった宮本の言葉が、徐々に小さくなっていった。
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