25 / 91

愛を取り戻せ:忘れられた熱い夜2

***   「江藤さんがお見合い――」  見えない何かが、音を立てて崩れていく感覚に宮本は襲われた。 『俺様は……おまえが好きだよ』  はにかむように笑って告白してくれた、大好きな先輩がお見合いをする。 『なななな、何言ってるんですか。冗談じゃない……江藤さんが俺を好きとかって、どうして』 『どうもこうもない。まんま、俺様の気持ちなんだけどさ』  酔っ払ってはいたが真剣な表情をそのままに、目を逸らすことなく好きだと告げてくれた。それなのに―― 「あのときのことは全部忘れられちゃった出来事だから、実際はないと同じなんだよな」  もしかして何かの拍子に思い出したら、お見合いを止めてくれるかもしれない。あの夜のことを思い出させるには、どうしたらいいだろう?  そんなことばかり無駄に考えてしまって、仕事が全然手につかなかった。ゆえに今日も、宮本の残業が決定的だったのである。

ともだちにシェアしよう!