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愛を取り戻せ②:お見合いをぶち壊したい

 宮本はぼんやりしながらパソコンに向かって、だらだらと残業をしていた。こんな状態で仕事をしていたら、今日のノルマを終わらせるには、かなりの時間を有することを分かってはいたが、どうしてもテキパキと作業できなかったのである。  だりぃなぁと思いながら、何度目かのため息をついたとき―― 「なーに、しけた顔(つら)してるんだ。手伝ってやるからさっさと終わらせて、一緒に飲みに行こうぜ!」    隣の席にいる同期の渡辺が、気を遣って肩をたたいてきた。 「何か今の言葉で、渡辺のやる気を貰った気がする。頑張って早く終わらせるぞ!」 「おおっ! その意気込みで仕事をしたら、あっという間に終わるって。どこまで進んでるんだ?」  ふたりで顔を突き合わせて書類に目を通していたら、その背後を江藤が音もなく通った。音がなくても気配や雰囲気で分かってしまう自分の察知能力に、内心呆れ果ててしまう。  思いきって振り向いた宮本の視線を受けて江藤は一瞥すると、身を翻してさっさと部署を出て行く。今日は残業をしないらしい―― 「珍しい、江藤先輩が残業しないで帰るなんて。やっぱり、お見合いの準備とかあるせいなのかな?」  渡辺がぽつりと呟く。 「さぁな……。あの人の考えてることは、サッパリ分からないから」  掴みかけた恋心があっさりとすり抜けていく感じは、言葉にできないくらいにショックだった。 「さてウルサイのが消えたことだし、ちゃっちゃと片付けて渡辺と楽しく飲むべく頑張っちゃうぞ!」  そんなショックを吹き飛ばそうと宮本はカラ元気を出して、パソコンに向き合った。 「何だかなー。その勢いで日中ちゃんと仕事をしていたら、残業せずに済むのによ」  昼間は大好きな江藤の動向がどうしても気になって、仕事が進まなかったことを渡辺には絶対に言えない――  そんな複雑な心境を隠しながら気合を入れた宮本の頭を軽く小突いて、渡辺は一緒に仕事をしてくれる。  渡辺が手伝ってくれたお陰で予想よりも早く、今日のノルマを達成させたのだった。

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