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ゲイバー・アンビシャスの憂鬱3

「いらっしゃーい! 半日ぶりね、レインくん」 「……いつも見慣れたハゲ頭じゃねぇから、気持ち悪さが半端ねぇな。店長のその格好で、客はドン引きしないのかよ?」 「そんなのでビビってたら、お店が繁盛しないでしょ。それよりも、一緒にいらっしゃるお客を紹介しなさいよ! 見てるだけでもゾクゾクしちゃうわ」  忍ママが年頃の女子高生のようにはしゃいだら、カーテンみたいな服をバサバサと波打ち、ほこりがすっげぇ舞った気がした。  あまりにもテンションが上がった姿を見たせいか、レインくんと呼ばれた客があからさまに嫌そうな表情を浮かべたのとは対照的に、後ろにいた連れが自ら前に出てきて、紳士的に頭を下げた。  掘りの深い顔立ちを彩る栗色の髪の毛が照明に当たって光り輝くせいで、否が応でも目立ちまくる長身の男―― 「はじめまして。レイン先輩の元同僚の井上と申します」 (どうしてビビらねぇんだ、コイツ。忍ママに逢うのは初めてなんだろ、おかしすぎる……)  柔和な笑みを浮かべる長身の男に、なぜだか高橋の面影が重なった。心の内側を見せない、バリケードのような笑みから目が離せない。 「井上さん、はじめまして。店長の忍ママです。悪いけどこのお店に来たからには、会員登録してもらうシステムになっているのよ。これに記入してくださいな」 「店長、今日は飲みに来たんじゃねぇんだ。大倉さんが来るまで、ちょっと待たせてもらおうと思って来ただけなんだ。コイツを連れてたら、逆ナンされて面倒くさいことになるからさ」  肩まで伸ばしている金髪を苛立ちげにかきあげながらレインが言うと、忍ママが手元にあるものをバシバシ叩きまくった。 「分かるわ~! お客がいなかったら私が逆ナンしにいくもの。そのままホテルにレッツゴーするわよ!」  井上という客と忍ママのカップリングの並びにゾッとしたとき、両目が何か大きなもので塞がれた。 「江藤さん、イケメンだからってガン見しすぎです」  少しだけ怒った声が背後から聞こえてきた。この大きなものは宮本の手か。 「あらやだ、江藤ちんってば恋人がいる前でイケメンに見惚れるなんて、最低だわ~」

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