13 / 287
第13話 再会
青みがかった黒髪に、切れ長の二重の目、すっと通った鼻筋と薄い唇。薄手の黒のニットが長身の彼によく似合っている。それにしても…。
ーーで、でかい…。しかも超イケメン!こいつだっ。絶対こいつが俺の同居人…。
とりあえず、スーツの男の方じゃなくて良かった…。このでかいイケメンは、まだ優しそうな顔をしてる分、怖くない。怖くないどころか、なんとなく懐かしい感じがするんだけど……。
「はい、終わってます」
「そうか。織部、もう帰っていい。ご苦労だった」
「はい。失礼します」
織部と呼ばれたスーツの男は、イケメンに深々と頭を下げると、俺には見向きもしないで、颯爽と帰って行った。
イケメンと二人取り残されて、また胸がドキドキと鳴り始める。
ーーな、なんだかさっきとはまた違う緊張が……。
俺が俯いて心を落ち着けていると、イケメンが低音の耳に心地よい声で、俺の名前を呼んだ。
「凛…。椹木…凛。久しぶりだな。変わらず、おまえは可愛らしい…」
イケメンが俺に向かって手を伸ばし、頰に触れてくる。
驚いて、びくっと肩が跳ねてしまったけど、その手の感触に覚えがあるような気がして、俺は自然と彼の手に擦り付けるように頰を寄せた。
彼の手の心地良さに目を閉じかけて、はっと我に帰り、身体を後ろに反らして距離を取る。
「なっ、何勝手に触ってんだよ…っ。てか、久しぶりって、俺はあんたなん…か、知ら……あれ?」
今度は俺からぐいと顔を近付けて、下から彼の顔をまじまじと見つめた。
ーーこの顔…それに、このいい匂いは…。
「銀ちゃん⁉︎もしかして、銀ちゃんなのっ?」
「ふふっ、そうだ。懐かしいな…凛」
ふんわりと優しく微笑む銀ちゃんに、俺はぎゅっと抱き着いた。
「うわーっ、銀ちゃんだ!久しぶりっ。元気だった?」
銀ちゃんを見上げて、少し目を潤ませて尋ねる。
「ああ、元気だ。凛も元気そうだな。少しは大きくなったか?」
「うっ…、まあ、どうせ俺はちびだけど…。そっかぁ、銀ちゃんだったのかぁ。あ〜、どんな人が来るか不安だったから、銀ちゃんで良かった…」
「驚かせたな…。凛、今日からよろしく」
銀ちゃんは、そう言って俺の額にかかる髪の毛に唇を付けた。
「ぎ、銀ちゃん…、もう俺はあの頃みたいな小さな子供じゃないんだから…」
俺は、銀ちゃんの胸を押して身体を離し、前髪を押さえると、慌てて玄関を飛び上がった。
ともだちにシェアしよう!