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第14話 勘違い
銀ちゃんに部屋の場所を教えてから居間に移り、2人で座卓を挟んで向かい合って座った。
銀ちゃんが懐かしそうに、そして何故か、こちらが恥ずかしくなるくらいの甘い顔をして、俺を見ている……。
「凛…、凛がここへ戻って来てくれて、嬉しいよ」
「まあ、俺はこの家が好きだったから…。銀ちゃんはいつ戻って来たの?」
「2年前に…。ふふ、凛は…ずいぶんと綺麗になったな…。もっと髪の毛を伸ばしたりはしないのか?いや、短くても充分可愛いのだけど…」
遠慮がちに、銀ちゃんが不思議な事を聞いてきた。俺は首を傾げて自分の髪の毛を摘んで見せる。
「えっ?伸ばさないよ。だってそんなの、俺は似合わないじゃん。それに綺麗でもないし…。ところで銀ちゃんはさ、なんでこの家に来たの?買いたいって言ったのも、銀ちゃんだろ?」
「ああ、それは、凛もさっき言ってたけど、凛がこの家が好きだろうと思っていたからだ。俺と2人で暮らすのにちょうどいいと思ってな。おまえの大好きな祖母の思い出の家だから…」
銀ちゃんが、少し頰を赤らめて、俺に微笑みながら優しく語る…。ん?今なんて言った……?
「…うん、大好きなばあちゃんの家だから、俺が守りたかった…。それより、今2人で暮らすって言った?銀ちゃんは俺と暮らしたかったの?」
「当たり前だ。凛は俺の花嫁だろ…。おまえが16才になったら、俺と一緒になって、この家で暮らしていこう」
俺はぽかんと口を開けて、銀ちゃんを見る。今、すごく変な顔をしていると思う…。それに、なんかとんでもない事を言われた気がする…。
「えっ⁉︎花嫁って、昔の約束の…?あれは子供同士の無邪気な約束だろ?もう一度会えるようにと…。違うの?だって俺は花嫁にはなれないよ…?」
「何を言ってる。冗談などではない。ちゃんと契約の印もあるだろう。そもそも、俺がこの家に来たのも、約束を果たす為だ。凛、おまえを俺の花嫁にする為にここへ来たんだ」
銀ちゃんの言葉に、俺は目を見開いて驚いた。
「ええっ⁉︎嘘だろ?だって、俺は男だよっ?天狗って、男同士でも結婚出来るのっ⁉︎」
俺の言葉に、今度は銀ちゃんが驚いて、持っていた湯呑みをがたんっ、と座卓の上に落とした。
「い、今なんて…?。男っ?嫌、凛は女の子だろ?だって、あんなに可愛かったじゃないか。白い肌にくりくりの目に、ピンク色の頰にふわふわの肩まで伸びた髪の毛に……。髪の毛はあの頃より短くなったけど、他は今だって、変わらない」
「お、お、俺はずっと男だ!あ、あの時は、女の子が欲しかった母さんが、髪の毛を切らせてくれなかったんだ…。おかげで、小学校に入ってから、どれだけからかわれたか…っ。あれから俺は、男らしくあろうと決めたんだ!」
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