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第15話 勘違い

銀ちゃんは、座卓の上に置いた手を、関節が白くなるくらい握りしめ、肩をぷるぷると震わせて白くなった唇を開いた。 「そんな…、凛が男…?俺の可愛い凛が…。いや、なんとなく、さっきから違和感を感じてはいたが…。俺は…、俺は凛を花嫁にする為に、契約を交わしたんだ…。ずっと頑張ってきたんだ…」 ぶつぶつと呟く銀ちゃんの言葉に、まるで俺が悪いような居たたまれない気持ちになってくる。 俺が上目遣いで窺うように銀ちゃんを見てると、銀ちゃんが急に顔を上げて俺を見た。 「あの時、凛も花嫁になるって言っただろ。なんで男だと言わなかったんだ?」 「だ、だから、俺は銀ちゃんに、俺でもなれるのか確認したじゃんか…。銀ちゃんが俺のこと、女と思ってたなんて知らないし…。てか、ねえっ、俺が悪いの?お、俺はただ、銀ちゃんと会うのが嬉しくて、一緒に遊ぶのが楽しくて、は、離れるのが…寂しかっただけなのに…っ」 銀ちゃんに責められて、あの時の銀ちゃんを慕っていた気持ちを拒絶されたように感じて悲しくなり、不覚にも涙を零してしまった。 俺の涙を見て慌てた銀ちゃんが、俺の隣に来て背中をそっと撫でる。 「わ、悪かった…凛。ちょっと混乱して…。そんなつもりじゃなかったんだ。ま、まあそうだな…。勝手に思い込んでいた俺が悪かった。でもあの時は凛のこと、すごく大切な存在に思ってたから。だから契約もしたんだが…」 俺は袖で顔を拭くと、隣にいる銀ちゃんの腕を掴んだ。 「その契約だけど…。俺の身体に付いた印って消せないの?契約も、『はい、やめます』じゃ駄目なの?」 銀ちゃんは、腕を掴んでいた俺の手を外して、大きな手で包む。銀ちゃんの手は、昔と変わらず温かかった。 「契約は…解く事は出来ないよ…。印も消せない」 「で、でも結婚しなかったらいいだけの話だろ?印はしょうがない…。痣みたいなもんだし、うん」 「契約は強力な呪力だ。そんな簡単には行かないよ…。契約を果たさないと、凛がまずいことになる…」 なんか話がとてつもなく、ややこしくなって来た。銀ちゃんがすごく申し訳無さそうに俺を見つめる。 「まずいことって…なに?」 「約束の16才を過ぎたら、凛の身体が日に日に蝕まれていく…。そして1年ぐらいで死……」 「ええっ⁉︎なんでそんな事になんのっ?い、嫌だっ。銀ちゃん何とかしてよ…っ。俺、そんなの嫌だっ。怖い…。契約って、そんな強いものなの?そんなのを、なんで俺と契約したのっ?」 「契約は絶対だ。俺は…凛が可愛くて仕方なかった。大好きだった。誰にも渡したくなかった。だから、契約という呪力で、凛を縛っておきたかった…。今、男と聞いて戸惑ってはいるが、凛を愛しく思う気持ちは、そんなすぐには消せない…」 「銀ちゃん……」 9年半振りに銀ちゃんに会えて、また昔のように楽しく過ごせると思っていたのに、とんでもない事実を突きつけられた。 俺はどうすればいいのかわからなくて、頭を抱えて唸るしかなかった。

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