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第16話 新生活2
銀ちゃんと暮らし始めて3週間が経ち、不安で仕方なかった俺の気持ちも、少しずつ落ち着いてきた。
とりあえず、契約を果たさなくても、俺が無事でいられる方法を調べてみるらしい。
契約を果たさなかったら本当に死んじゃうのかどうかを聞いたら、銀ちゃんのひいおじいちゃんの時代に、契約を交わしていたのに違う人と結婚して、契約を交わしていた相手が死んじゃった事があったらしい。なんとも酷い話だ…。
ちなみに、天狗同士だと、お互いの寿命が少し縮む程度で済むそうだ。人間は弱いから死んじゃうんだって…。理不尽だ。
高校の入学式の日、体育館の後ろから騒めきが聞こえて振り返ると、銀ちゃんが入って来たところだった。
ーー見に来てくれたんだ…。
俺は嬉しいけれど、少し恥ずかしくもあって、照れ笑いを浮かべていると、俺に気付いた銀ちゃんが手を振ってきた。その瞬間、悲鳴と共に周りの視線が一斉に俺に突き刺さる。俺は顔を引きつらせてそっと前に向き直り、ひたすら身体を小さく縮こませていた。
でも、ある意味目立った俺は、教室に行くと何人かに話しかけられて、すぐに友達が出来た。知り合いが1人もいなくて不安だったから、とてもほっとした。
そして入学式から1週間が過ぎると、いつも一緒にいる仲の良い友達も出来た。
彼は、真葛 清忠(まくず きよただ)と言って、短髪で背が高く、端整な顔立ちの男だ。
彼も遠くから引っ越して来て、知り合いがいないと言っていた。
「凛ちゃーん、おはよ。なあ、今日、凛ちゃん家に行ってもいい?」
「ちゃん付けはやめろ。別にいいけど…」
清忠が俺の机の側にしゃがみながら話しかけてくる。俺は軽く頰を膨らませて答えた。
彼は俺の頰を指で突つき、くくっと笑った。
「ほら、またそんな可愛い顔をして。女子に妬まれるよ、凛ちゃん」
「俺はかっこいいと言われたいんだ…」
ますます頰を膨らませる俺の手に、清忠が飴を一つ乗せる。
「一ノ瀬さんみたいに?あの人、すっげーかっこいいよなっ。今日は家にいるの?」
「いると思うよ。午前中だけ、大学に行くって言ってたし。会いたいの?」
「いや…別に。まあ滅多にお目にかかれない美形だから、顔を拝みたいなあ、と思っただけ」
「ふ〜ん…」
清忠に貰った飴を口に放り込んで、適当な返事を返す。
銀ちゃんは一流国立大学に通う傍ら、家が手掛ける仕事も手伝っている。様々な分野に展開している結構大きな企業で、中々に忙しいみたいだ。
人間社会に溶け込むには、学歴と資金が必要なんだそうだ。
そして、清忠には銀ちゃんが俺の同居人である事を伝えてある。
ーー今日は大学だけで、「昼からはゆっくりとしながら、凛が帰って来るのを待ってる」って、確か言ってたなぁ…。
でも、友達を連れて行くのは俺の自由だし、いいよね…。
少し銀ちゃんの事が気にかかったけど、高校で出来た初めての友達だし、俺は、清忠を家に連れて行く事にした。
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