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第19話 銀

清忠が来た翌日、俺より家を出るのが遅い銀ちゃんが、玄関まで見送ってくれた。 「じゃあ、行ってくるね」 「ああ、凛、ちょっと待って。髪の毛が跳ねてる」 「えっ、どこ?」 銀ちゃんに指摘されて、俺は頭を銀ちゃんに近付けた。銀ちゃんは俺の髪の毛を撫で付けたと思ったら、ふわりと俺の身体を包むように抱きしめてきた。 「な、なに?どうしたの?」 俺は焦って銀ちゃんの胸を押すけど、軽く抱いてるようでいて、びくとも動かない。 俺の髪の毛に顔を埋めていた銀ちゃんが、昨日、清忠が舐めた箇所に唇を寄せて吸い付く。その瞬間、背中がぞくりと震えて、身体の奥深くが熱くなった気がした。 「あ…や…っ、銀ちゃん…」 銀ちゃんの胸からどきどきと鳴る心音が、俺の手を通して響いてくる。それが俺の胸のどきどきと重なって、まるで銀ちゃんと一つになったような錯覚に、目眩がした。 「凛…おまえは甘いな…。ここ、昨日の奴の匂いが付いてる…」 「ん…、えっ、うそ…。冗談で舐められた、だけだよ…」 「やっぱり、あいつは…。いや、いい。おまえに悪い虫が近寄らないように、まじないをかけておいた。大丈夫だとは思うが、気をつけろよ…」 「んっ、なに…?」 耳の傍で囁かれる銀ちゃんの低い声に、頭の中が痺れて蕩けそうになる。 銀ちゃんはもう一度、俺をきつく抱きしめてから、ゆっくりと離れて微笑んだ。 「ほら、髪の毛も直ったし、気をつけて行け」 「うん…行ってきます…」 俺は数回小さく深呼吸をしてから、まだ鳴り続けてる胸に手を当てて、銀ちゃんをちらりと見ると玄関を出た。

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