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第22話 真葛 宗忠
清忠の兄さんは、玄関から進んだ突き当たりの部屋に入って行った。
「凛ちゃんの名前、兄さんに言ってたっけ…?」
「あ、ごめん。先週、清が早く帰った日に、俺ん家の近くの駅でばったり会ったんだ。その時に少し話したよ。」
「ふ〜ん…」
面白くなさそうに返事をして、清忠が部屋に入っていく。俺は、なんかまずかったかな…と首を傾げながら後に付いて入っていった。
清忠の部屋は二間続きになっていた。入ってすぐの部屋は、フローリングの床に机とソファーとローテーブル、テレビまで置いてある。奥の部屋は和室で、寝室になっているようだった。
「清…いい部屋に住んでるね」
「そう?実家の方がもっと広いよ。凛ちゃん、そこに座ってて」
和室を覗いていた俺に、清忠がソファーに座るように勧めてきた。
「清って、もしかして実家で『坊ちゃん』なんて呼ばれてたりして…」
俺の言葉に、清忠は無言で目を逸らす。その姿に思わず吹き出してしまった。
「まじでっ?どんだけお金持ちの家なんだよっ。あははっ」
清忠に睨まれながらお腹を抱えて笑っていると、扉をノックする音の後に、扉が開いて清忠の兄さんが入って来た。
「失礼するよ。今、使用人が出払っててこんな物しか出せないんだが…悪いね」
清忠の兄さんが、ソファーの前のローテーブルにポットとカップとソーサー、高価そうなクッキーが乗った皿を並べていく。
「兄さん…、後は俺が…」
「そうだ。まだ名乗ってなかったね。俺は、真葛 宗忠(まくず むねただ)と言うんだ。よろしく、椹木…」
「あ、凛って言います。こちらこそ、よろしくお願いします」
俺と挨拶を交わす宗忠さんを、清忠が不安げに見る。
「兄さん…もういいだろ。出てってくれよ…」
「そんな事言わなくてもいいじゃないか。俺はもう少し、椹木くんと話したい。いいかな?」
「あ、はい…」
「ふっ、ありがとう。本当に君はいい子だ。椹木くんは、紅茶は大丈夫かな?この紅茶はとても香りが良くてね…」
宗忠さんはそう言って、ポットから紅茶をカップに注ぎ出した。
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