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第25話 救出
俺が目を閉じようとしたその時、大きな音が響いて、宗忠さんの身体が吹き飛んだ。何かにぶつかる音がして、そちらを見ようと、咳き込む喉を抑えてゆっくり顔を上げる。彼の身体は、洋室との境の襖に当たったらしく、襖ごと倒れ込んでいた。
その身体の上に素早く男が飛び乗り、宗忠さんの顔の横すれすれに日本刀を突き刺す。俺はぼやける視界に何度か瞬きを繰り返して、その人を見た。宗忠さんの上にいる白いシャツを着た男の背中には、輝く銀色の…翼が…。
「銀…ちゃん…っ」
夢じゃない…。銀ちゃんが来てくれた…っ。
銀ちゃんに向かって手を伸ばしかけた俺の両脇を、いつの間に来たのか、2人の男が支えて起こしてくれる。顔を上げて見ると、1人は引っ越しの時に見た確か織部とか言う眼鏡の人。もう1人は、俺と年の変わらない若い男。若い男は俺を見るとにこりと笑って、肌蹴たシャツを整えてくれた。
「大丈夫?もう少し待ってね。銀様があいつにお灸をすえるから」
その言葉に頷いて、銀ちゃんを見る。よく見ると、銀色の翼が小刻みに震えていた。
「おまえ、よくも汚い手で凛に触れてくれたな。その上、怪我までさせて殺そうとした…。ここで俺に消されても、文句は言えねえよなぁっ」
「はっ、おまえこそ、このガキが邪魔なんじゃないのか?俺が代わりに消してやろうとしたんだ。感謝して欲しいくらいだ」
「……」
銀ちゃんの翼の震えがぴたりと止まる。銀ちゃんが無言で日本刀を床から引き抜いて振り上げ、宗忠さんに振り下ろそうとした瞬間、清忠を連れて行ったスーツの男達が飛び込んで来て、銀ちゃんの腕を押さえた。
「一ノ瀬様っ、お鎮まり下さい。主のほんの冗談でございます。そちらの方も大したことなかったのですから…。それくらいの傷は、あなた様が治してあげれるでしょう?どうか、刀を収めて下さいませ…。ここで、主を殺めますと、両家にとってもよくありません」
左近か右近かわからないけど、彼の言葉に銀ちゃんは長く大きな息を吐くと、刀の向きを変えて、宗忠さんの肩に目掛けて、思いっきり柄を振り下ろした。
「ぐぅっ、…っ」
鈍い音の後に肩を押さえて呻く宗忠さんを一瞥すると、銀ちゃんは、刀を鞘に収めてこちらに振り返り、今にも泣き出しそうな顔で俺の傍に来て抱きしめた。
「凛…怖かったな…。ここ、腫れてるし血が出てる…。家に帰ったら治してやるからな」
「うん…、銀ちゃん…ありがと」
銀ちゃんの温もりと匂いに包まれて、俺の緊張の糸が切れてしまい、俺はそのまま意識を失った。
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