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第27話 諭される
しばらくそうしていたけど、急に恥ずかしくなってきて、俺は銀ちゃんの胸から顔を離すと身体を起こした。
「銀ちゃん…、舐める以外に治す方法はなかったの?」
立てた肘に頭を乗せて寝転び、下から俺を見上げる銀ちゃんに聞いてみた。
「ない…「あるよ」」
銀ちゃんの言葉に被せるように声がして振り返ると、あの時助けに来てくれた若い男の人が、扉の所に立っていた。
「傷治った?良かったね。ほんとはこの軟膏を塗っても治るんだけど、俺が治す方が早いって、銀様が凛を抱えて自分の部屋にこもっちゃったんだよね〜」
「浅葱…」
銀ちゃんが名前を呼んで、その人を睨み付ける。浅葱と呼ばれた男は肩を竦めて、「すいませーん」と軽く謝った。
すると、今度は俺を睨んでくる。
「そもそもは凛が今朝、遅れるからと慌てて出て行って、俺の結界を付けなかったのが悪い。それに、メールの返信も見てないだろう。だから、浅葱に追いかけさせたんだ。あそこに真葛のガキだけなら放っておいたんだが、あのクソ狐がいると連絡が来たからな…。急いで駆け付けた。本当に間に合って良かった…」
「うっ、ごめんなさい…。え?クソ狐?清の兄ちゃんは狐なの?」
「真葛は妖狐の一族だ。おまえの友達だというあのガキもだ。恐らくは、俺と婚姻の契約を交わしたおまえの事を、探りたかったのだろう」
「え…清が…?」
俺は銀ちゃんの言葉に驚き、ショックを受けて俯いた。
銀ちゃんが起き上がり、俺の肩を抱いて引き寄せる。
「凛…、最初は真葛のガキも、おまえに近付くのが目的だったんだろう。でも、おまえと過ごすうちに、本当の友達になりたいと思ったんだ。おまえは、真葛のガキを許せないか…?」
俺の顔を覗き込む目が、とても優しい。
「俺は…清の事、好きだよ。大事な友達だと思ってる。でも清は、そうじゃないかもしれないじゃん…。なんで、銀ちゃんはそう言い切れるの?」
「ふっ、本人がそう言ってたからな…。ほら、入れ」
銀ちゃんが扉に向かって声をかけると、浅葱さんの後ろから清忠が姿を現した。
清忠は、俺を見るなりぽろぽろと涙を流して謝る。
「凛ちゃん…っ、ごめんっ。俺、兄さんを止めれなかった…。助けれなくてごめん。俺は、始めは天狗の花嫁を探れ、って言われて近付いたんだ…。でもそんな事、もうどうでもいいくらい、すぐに凛ちゃんが好きになってた。1番の友達になりたいと思った。だから、凛ちゃんが俺に、『清の事好きだし味方になる』って言ってくれた事、すごく嬉しかった…。ほんとにごめん…。もう、凛ちゃんの前に姿を見せないから…」
「駄目だよっ、許さない。俺の前から消えたら許さないからっ。清は…俺の1番の友達だろ。これからもずっと、一緒だろ…っ」
「凛ちゃん…」
俺はまだふらふらとする身体で立ち上がり、清忠の所へ行こうとする。すると、清忠の方が駆け寄って来て、俺にしがみ付いてきた。
清忠が「ごめん…」と呟いて嗚咽を漏らし続ける。俺は「うん、うん…」と頷いて、清忠の背中を何度も撫でた。
後から浅葱さんが教えてくれたんだけど、抱き合う俺と清忠を見て、銀ちゃんが「すごくもやもやして腹が立つ」って言ってたらしい。浅葱さんが、「銀様と凛を見てたら、こっちがもやもやするわ…」と呟いていたけど、それがどういう意味なのか、俺にはよくわからなかった。
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