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第34話 天狗の郷

天狗の郷へは、人間は行く事が出来ない。郷全体に結界が張られていて、どんなに歩いてもたどり着けないし、空からも見る事が出来ない。だから、天狗に連れて行ってもらうしかないんだ。 山の木々よりもかなり上空を飛びながら、鉄さんがそう教えてくれた。 飛び立ってすぐに、昔、銀ちゃんがよく連れて行ってくれた広場や滝が見えて来て、ここでよく遊んだ事を伝えると、「ここは天狗の郷の領域だよ」と言われた。 ーーそうだったんだ…。人間では行けない所に連れて行ってくれてたんだ…。また、銀ちゃんと一緒にいろんな所に行きたいな…。 俺は飛んでいる間、銀ちゃんの事ばかり考えていて、鉄さんの話を上の空で聞いていた。 30分ぐらい経った頃に、鉄さんに名前を呼ばれて意識を目の前に向けると、山あいの中に、そこそこ大きな街が現れた。 綺麗な日本家屋が建ち並び、まるで古都の街のようだ。街の至る所に小さな川が流れ、所々に木や花が植えられていた。 「わあっ…、すごく綺麗…」 「気に入ってくれた?ふふ、良かった。じゃあ、降りるよ」 鉄さんは、少し高台に建っている大きな家の広い敷地の端に降り立った。織部さんも、後に続いて降りてくる。 「凛くん、天狗の郷へようこそ。ここは僕の家だよ。しろの家は少し離れた所にあるんだ。どうする?少し休む?それともしろに会いに行く?」 きょろきょろと珍しそうに顔を巡らせていた俺に、鉄さんが聞いてきた。 ーーどうしよう…。いきなり俺が目の前に現れたら、銀ちゃんは困る?それとも喜んでくれる…? 俺は少し迷ったけど、「会いに行きます」と答えた。

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