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第39話 対面
広い玄関の近い場所に、応接間があった。
銀ちゃんに手を引いて連れてこられ、応接間の扉の前で一度、心を落ち着かせる。そんな俺を、蕩けるような甘い目をして銀ちゃんが見てくるのだけど…。まだ恋人らしい事に慣れなくて、すごく恥ずかしい。
緊張してふうふうと小さく深呼吸する俺に、銀ちゃんが「可愛い」と呟いて頰に口付けきた。甘過ぎる銀ちゃんに俺は戸惑ってしまい、眉尻を下げて情けない顔をする。
そこに、お盆にお茶や軽食を乗せて、浅葱がやって来た。
「銀様…、想いが通じ合って嬉しいのはわかりますけど、あまり暴走すると凛が困ってしまいますよ。見て下さいよ…、とっても困ってるでしょ?」
「困ってるのか?可愛いな…」
浅葱に言われて、銀ちゃんが嬉しそうに俺の頰をするりと撫でる。
「はあ…、凛、頑張って早く慣れようね…。じゃあ入りましょうか?失礼しまーす」
「えっ、ちょっと待っ…」
俺の制止も虚しく、浅葱が扉を引いて開けた。
中は畳に絨毯が敷かれ、その上にテーブルと5脚の椅子が置いてある。1番奥の上座に、濃い鼠色の着物を着た、40代半ばぐらいの上品な男性が座っていた。
少し白髪の混じった髪を後ろに流していて、俺を見る切れ長の目元が、銀ちゃんとそっくりだ。
「ようこそ。銀の父親の一ノ瀬 縹(いちのせ はなだ)です」
優しい笑顔で、そう挨拶をされたけど、天狗の頂点に立つという方だけあって、すごい威圧感に圧倒される…。
「は、初めましてっ。椹木 凛と言います。銀ちゃ……、し、銀さんのこ……、あの…同居人です…」
「同居人?ははっ、そうか、よろしく。銀の花嫁さん」
「えっ?花嫁…。あ、はいっ。銀ちゃんの花嫁ですっ…、あっ」
自分でも何を言ってるのかわからなくなって、助けを求めるように銀ちゃんを見上げた。そんな俺の頭を銀ちゃんがぽんぽんと撫でるのを見て、銀ちゃんのお父さんは、くすくすと笑い出した。
「ふふっ、凛くんは可愛いねぇ」
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